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かんな
786
みやこ
1,863
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今日は、もう一話!
白い天井だった。
どこか、消毒液のにおい。
カーテン越しの光が、まぶしい。
すちは、しばらく動けなかった。
(……ここ、どこだ)
体が、重い。
腕を動かすと、シーツが小さく音を立てた。
「……起きた?」
低い声。
近い。
顔を向けると、
知らない……いや、見たことのある顔があった。
同じクラスの、男子。
名前は――思い出せない。
「あ、無理しなくていい。まだ」
その人は、椅子に座ったまま立ち上がらなかった。
距離を、ちゃんと保っている。
(……なんで)
すちは、喉がうまく動かない。
「保健室。廊下で倒れた」
淡々とした説明。
でも、目は離れない。
「先生は呼んだ。今は職員室」
……運ばれた?
(だれが)
「俺、みこと。……同じクラス」
名前だけ、落ちてくる。
「……ありがとう」
声は、思ったより小さかった。
みことは、少しだけ目を伏せた。
「礼、言われることじゃない」
そう言って、
それ以上は何も言わなかった。
沈黙。
すちは、その静けさが怖かった。
責められない空気が、逆に。
(倒れるとか、迷惑だよな)
(やっぱり、いらない)
(きえてしまえばいいのに)
(必要ともされないやつが)
その日の午後、早退になった。
保健室を出る前、
みことは一言だけ言った。
「……明日、来れるなら来い」
命令でも、優しさでもない。
事実みたいな声。
「無理なら、無理でいい」
そう付け足したのが、
なぜか、胸に残った。
夜。
家は、いつも通りだった。
「遅い」
「何やってた」
説明しても、
聞く気はない。
すちは、言われる前に夕飯を作った。
台所に立つ時間だけが、
何も考えなくていい。
部屋に戻ると、
ベッドに倒れ込む。
天井を見る。
(……必要とされるって、なんだろ)
学校でも。
家でも。
誰かにとっての「役割」はあっても、
「自分」は、どこにもなかった。
なのに――
保健室の椅子に座る、
みことの姿が、頭から離れない。
心配そうでもなく、
でも、放ってもいない。
(……変なやつ)
そう思ったのに、
胸の奥が、少しだけ熱かった。
次の日の朝。
校門の前で、足が止まる。
行きたくない。
でも、行かない理由もない。
教室に入ると、
いつもの空気。
視線。
ひそひそ声。
すちは、席に向かおうとして――
「すち」
呼ばれた。
クラスで、
その名前を、ちゃんと呼んだのは。
みことだった。
「……大丈夫か」
短い一言。
それだけなのに、
胸の奥が、ぎゅっと縮む。
(……なんで)
(なんで、気にするんだよ)
すちは、目を逸らしたまま、小さくうなずいた。
コメント
4件
尊すぎね? 推し発作を起こしちゃうじゃん!!...Ω\ζ°)チーン