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夜の二時、アパートのインターホンが鳴った。
こんな時間に誰か来るはずがない。私は布団の中で息を殺した。もう一度、今度は長く、押しっぱなしのようにブーッと鳴る。
——宅配便です。
ドア越しに、くぐもった男の声。
ありえない。今日、荷物は届く予定はない。そもそもこの時間に配達など——。
スマホを見る。圏外。Wi-Fiも切れている。さっきまで動画を見ていたのに。
——不在票、入れておきますね。
男の声がそう言って、静かになった。
やがて、カサリと紙の擦れる音。
足音が遠ざかる。
私は十分ほど待ってから、そっと玄関へ向かった。ドアスコープを覗く。誰もいない。廊下の非常灯だけが青白く光っている。
ゆっくりとドアを開ける。
足元に、一枚の紙。
不在票だ。
だが、差出人の欄に書かれているのは、私の名前。
宛名も、私。
品名の欄にはこう書いてあった。
「あなた」
喉がひくりと鳴る。
背後で、コトリと音がした。
振り向く。
リビングの奥、暗闇の中で、何かが立っている。
電気は消していないはずだ。なのにそこだけ、墨を流したように黒い。
それが、ゆっくりと首を傾ける。
——お届けにあがりました。
さっきと同じ声が、今度は部屋の中から聞こえた。
私のスマホが震える。
画面に表示されたのは、知らない番号。
メッセージが一通。
『置き配完了しました』
その瞬間、背後でドアが閉まる音がした。
鍵のかかる音。
カチャリ。
私は、まだ玄関の外に立っている。