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リビングには、異様な光景が広がっていた。
エプロン姿で震える健一と、高級スーツをボロボロにされ、床に這いつくばる部長。
かつて上司と部下だった二人が、今は同じ「汚物」として、私の足元に並んでいる。
「さて、二人とも。ここは私の家。居候を二人も養うほど、私はお人好しじゃないの」
私はソファに深く腰掛け、里奈に目配せをした。
里奈はニヤリと笑い、健一の頭をヒールで軽く踏みつける。
「奈緒さん。どうせなら、この二人に『席』を争わせたら? 負けた方は、私が引き取って、一生かけて『借金返済の道具』として使い潰してあげるわ」
「里奈、お前……! 俺をどうするつもりだ!」
部長が絶叫するが、里奈は冷たく言い放つ。
「部長。あなたの隠し口座のパスワード、もう全部ナオミさんに教えちゃった。あなたはもう、一円の価値もないただの『肉の塊』なのよ」
私は、テーブルの上に一本の汚れた雑巾と、一膳の箸を置いた。
「今から一時間。この家の中を、どちらがより『美しく』磨き上げるか。勝った方は、今夜このリビングで眠ることを許しましょう」
「……負けた方は、里奈さんのアパートに連行されて、朝まで彼女の『ストレス解消』に付き合ってもらうわ」
「……っ!!」
健一と部長の顔に、本能的な恐怖が走った。
里奈のアパートへ行けば、どんな肉体的・精神的な拷問が待っているか、二人は嫌というほど理解していた。
「はい、スタート」
私の合図とともに、二人は獣のように床へ飛びついた。
部長はプライドをかなぐり捨て、這いつくばって廊下を磨く。
健一は、「里奈にだけは渡されたくない」という一心で、爪が剥がれるほど床を擦る。
「おい、そこは俺の担当だ! どけ、健一!」
「うるせぇ!!」
かつて会議室で理路整然と語り合っていた二人が
今は床の汚れを巡って、互いを罵り合い、突き飛ばし合う。
その醜い争いを、私はナオミとしてカメラに収め、全世界に発信し続けた。
『元エリートたちの椅子取りゲーム』
同時視聴者数は7万人を超えた。
一時間後
汗と涙でぐちゃぐしゃになった二人が、私の前に跪いた。
「判定は……里奈さん、どうかしら?」
「そうね。部長は必死だけど、やり方が雑。……健一の方が、私に怯えている分、細かいところまで磨けているわ」
「……あ、ああ……」
部長が絶望の声を上げ、床に崩れ落ちた。
健一は、勝利の安堵で「よかった……」と漏らしたが
それは「妻に支配される道」を選んだという、救いようのない肯定だった。
「決まりね。里奈さん、部長を連れて行って」
「ええ。楽しみだわ。……さあ、行きましょうか、部長様?」
里奈が部長の髪を掴み、引きずるようにして玄関へ向かう。
部長の悲鳴が夜の廊下に響き、やがてドアが閉まる音とともに消えた。
リビングに残された健一は、私の足元に顔を押し付け、震えていた。
「……奈緒、俺、頑張っただろ? だから、捨てないでくれ……」
私は彼の顎を掬い上げ、聖母のような微笑みを浮かべた。
「ええ。あなたは私の『一番の所有物』よ。…でも、安心して。明日にはまた、新しいゲームを用意してあげるから」
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#大人ロマンス
#サレ妻