その人はまるで、童話の王子様だった。
『どうして泣いてるの』
そう、キャラメル色の瞳に問われても、わたしは子どものように泣きじゃくって答えることができなかった。
『かわいそうに。俺が助けてあげる』
甘い声が耳をくすぐった。
かと思うと、きれいな指が軽やかにキーをなぞった。
カタ、カタ…
小気味よい音に乗せられるように、にわかに輝き始めた数字だらけの画面。
無表情なそれは、あっという間に生まれ変わってしまった。
まるで魔法をかけられたみたいに。
『魔法? …キミって、かわいいこと言うね』
心地よい笑い声が耳を打った。
とくん…
その瞬間、わたしの胸もかすかにはねる。甘く、切なく…。
じっと深く見つめられて、キャラメル色の瞳に見惚れた。
指が、頬にふれて…唇にふれて…。
甘い瞳が、ゆっくりと近づいてくる。
そして―――。
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