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自室のドアを勢いよく閉める。私はベッドに顔を埋めて涙を流す。
「っひ…うっ…ぅ…」
声を出さないように、しっかりと口を押さえて。誰にもバレないように、静かに、静かに。
(ごめんなさい。…ごめんなさい。)
私はベッドから顔をあげ、すっと立ち上がる。そして、自室のドアに鍵をかけた。数時間後、夕食の時間がやってきた。スワンがドアをノックする。
「マリー様、夕食の準備ができました。」
ドアノブを回す音が一回、二回。スワンは優しくドアをノックする。
「マリー様、寝ているのですか?」
私は返事をせずに、静かにスワンがドアから離れるのを待つ。
(ごめんなさい、スワン。今は誰とも顔をあわせたくないの。)
私はもう一度ベッドに顔を埋めた。
「…あ、あれ。」
気づくと、もう夜の10時半になっていた。随分ぐっすりと眠ってしまったみたい。私は自室の窓から空を眺める。月光が眩しい。
「マリー、起きてるか。」
ドアに顔を向ける。父の声だ。きっと、スワンに言われてきたのだろう。私はまた返事をせずに、父がドアから離れるのを待った。
「マリー、もし起きているなら聞いてくれ。今日、高校で何かあったのか?」
父が優しく私に問う。私は少し息を吸って、小さく声を出した。
「なにも、っありませんでしたわ…。」
「本当か?」
「本当です…。」
嘘をつくたび、心がやられてしまう。
(こんな私を許してください。お父様。)
少し間を空けて父が口を開いた。
「何かあったら相談するんだぞ。」
そういって、父はその場を去った。私は静かに涙を流した。嘘をついてしまったという罪悪感と、助けてほしいという本音が混ざって、涙として表された。ごめんなさい。お父様、ごめんなさい。
ー続くー
ご視聴いただきありがとうございました。