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「イザベラ様のような考え方はしたことがありませんでした。私はこれでも自分の人生の主役は自分だと生きてきています。21歳の私には到達できない深い闇をイザベラ様から感じます。ルイス王太子殿下がの言葉遣いが荒くなり、世界中の女を抱きつくしたような危険な雰囲気を纏いはじめたのは彼が7歳くらいの時でした。それ以来、ルイ王子はルイス王太子が本当の自分を取り戻せるまで全力でサポートすると言って彼を補佐するようになりました。ルイス王太子の次期国王としての資質を疑う声が出はじめていましたが、ルイ王子がイザベラ様と婚約したことでルイ王子を次期国王にという声は無くなりました。女性関係に疎いので、ルイス王太子がイザベラ様を好きなことが変なのかどうかは分かりません。しかしルイ王子がイザベラ様と婚約したのは、周囲から無視されたイザベラ様とルイス王太子を王太子の座に居させ続けるためです」
ルイ王子は私にも本当の自分を取り戻せるまでサポートすると言っていた。
それは兄ルイスが既に5年も自分を見失っているようなのを間近で見てきたから、出てきた言葉だったということだ。
「イザベラは王妃にはできない問題児だからルイ王子は婚約したのですか?ルイ王子の私への気持ちは愛ではなく同情ということですか?ルイス王太子の唐突な私への告白と違い、ルイ王子の愛は真実だと思っていたのでショックです」
私は将来的にルイ王子は、あと5年もすればレナード・アーデン侯爵のような超美男子になると予想していた。
そのような男とお金を払わずに連れ添える幸福を手放したくはない。
しかし、同情のような気持ちで一緒にいられるのは流石に虚しい。
「私は男女のことに疎く、ルイ王子がイザベラ様を愛しているかどうかは分かりません。バーグ公爵はイザベラ様を国外留学させることで、アカデミーに行かないで済むようにしようとお考えでした。しかし、同じ年のルイ王子が婚約を申し出て、アカデミー在学中も自分が側でイザベラ様をサポートするとおっしゃったので国外留学の話もなくなりました」
カルロスは私が本物のイザベラではないと確信したことで、必要なイザベラ情報を話してくれるようになっている。
はっきり言って予想外のものばかりだ。
生まれながらの可愛さを持ち、超金持ちなのに一体イザベラは何をやっているのだ。
珠子は背が高いだけのブスだがメイクで雰囲気美人に仕上げ、金持ちでないが肉体労働とも言えるCAとしてコツコツお金を貯めローンでマンションも購入している。
しかし、イザベラにはルイ王子という最強の男がいて、珠子はいつだって弄ばれて捨てられてきた。
ルイ王子はイザベラから解放してあげた方が幸せになれる気がする。
「カルロス、このまま私と国外で結婚しましょうか?明らかに私の存在がルイ王子の輝かしい未来を奪っています。カルロスと私は1年7ヶ月過ごして、随分仲良くなりましたよね。私はカルロスにときめいたりはしませんが、結婚相手としては一緒にいて楽な相手がベストではないかと考えています」
結婚したことがないのでわからないが、結婚と恋愛は別だという。
カルロスと私は明らかに相性が良い、お互いときめきは感じていなそうだが友達夫婦のようになれる気がする。
「イザベラ様はお心がやはり39歳のようですね。今、お身体は12歳の少女です。まだ、結婚できませんよ。私はルイ王子に忠誠を誓った身です。彼のお心を置いてあなたを奪うことはできません。でも、旅をしていてイザベラ様はとても魅力的な方だと思いました。ルイ王子の同情ではない気持ちも十分引き出せると思います」
私に魅力があるというのはお世辞だろう。
カルロスの私に対する評価が高いのは、我儘イザベラと比べているからだ。
つまりこれから私は常に協調性のない我儘イザベラと比べられるだろう。
協調性を武器に女社会で生き延びてきた私がイザベラになれば、これ以上落ちることのないだろうイザベラの評価は上げられる。
「自分が12歳であることを軽く失念しておりました。明らかに40歳手前で結婚に焦っていた気持ちを引きずっています。アカデミーに寮とかはありますか?寮があればすぐに令嬢から無視されている状態はひっくり返せる自信があります。私は男性の心を掴むことはできませんが、女性に関しては専門分野です。12歳から39歳を女ばかりの社会で過ごした、女社会で生きるエキスパートです。どうやら10歳で人生を詰んだイザベラの人生を大逆転に導ける存在として私は彼女に転生した気がしてきました。本物のイザベラが世界にいらない子として天に召されている可能性は否定できません。39歳で車に轢かれて生死不明の私に彼女が転生している可能性もあります。39年間私が一切して来なかった自分勝手な行動をとりながらも、ルイ王子という最強サポーターを手にしていたイザベラは私にはないヒロイン力があります。私が詰んだと思っている人生も、私とは全く違う彼女なら楽しく生きてくれる気もしてきました」
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