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熱を入れた聞き方をするも、彼女は変わらず雨の中の独り言のような話し方を続けた。


「まずは後者から答えましょう。裏切ったというのは違います。私は初めから晃一さんの協力者でした。ですが、先輩の協力者であったことも噓ではありません。

一見矛盾しているように思われますが、私目線での判断基準はひどく単純です。私は正当性を信じて行動しました。確かに晃一さん側にばかり味方していたのは事実です。しかし、途中からは先輩に助け舟だって用意したんですよ。まあ、結局見逃してしまったようですが。

では、前者に移りましょうか。なぜ先輩の復讐は失敗に終わったのか。もうお分かりかと思います、それらが晃一さん側によって用意されたレールの上を走っているに過ぎなかったためです。先輩が復讐を強く誓ってくれたあの晩、それは過去形となり、この未来を確定させたのです。

普通に離婚を切り出しても応じないだろうから。嘘に巻き込まれ始まった婚姻は、嘘で終わらせるべきだから。三年苦しんだのなら、三年苦しめるべきだから。すべて因果応報。彼らは、本来神の行うべき仕事を代わりに担っただけ。……さて、質問は他にありますか?」


そこにあったのはあまりに残虐で、まっとうな事実だった。初めはそれを受け取るだけで手いっぱいだったが、次第に胸の奥から何かが、ふつふつとこみ上げてきた。


転がってきた林檎がつま先に触れる。心臓の痛みを服ごと握りしめた。


「まったくもって、因果応報でない」


「先輩。あなたは認めるべきだ」


「違う、違うの。だって、私は晃一の未来を奪ったのに、私は今しか失っていない。まだ、まだまだ報いが足りていないじゃない」


涙は塩辛かった。奇妙な感覚があった。この歪な感情はどこまでもまっすぐで、これまで信じてきた世界のほうが、この身とともに揺れ歪んでいる。


全てがばらばらに散らばって、正されていく。数十年一つが足らず、諦めて物置にしまったパズル。その最後のワンピースが見つかり、それへの思い出が想起されるような。忘れてしまっていた大切が見つかったような。過ちに気づいた。

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