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《数日後》
「アオイ、来い」
「はいっ」
朝の支度をしていたら、じいさんに呼ばれた。
(え? なになに? 今日、急にイベント発生してない??)
「出かける準備をしろ。
今日から儂は忙しくなる。
……だから、お前に町までのルートを教えておく。
これから先、食料が足りなくなったら、お前が行くのじゃ」
「はい、わかりました!」
(うえぇ……
あの魔物うじゃうじゃの森を? このか弱い俺に?
もうね、異世界転生って言うより、これ異世界”転性”生活だからね!?)
心の中でめっちゃ泣きながら、
俺はグリード城でもらった服に着替える。
よし、準備完了!
「行くぞ」
「ユキちゃんは、どうしましょう?」
「安心せい。
今までも、一人で留守番できとったわ」
「……はい、わかりました」
(ユキちゃん……健気すぎて尊い……泣く)
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《山道》
じいさんを先頭にして、薄暗い山道を進んでいく。
周りは、自分の背より高い木ばっかり。
上から絶対、何か狙ってるでしょこれ……!
(例えるなら――
シャンプー中に「背後からジト目で見られてる」ってあの恐怖体験だよね!?)
バキッ!
「ひゃっ!?」
「ただ木が折れただけじゃ。そんなに驚くな」
「す、すみませんっ」
(もう無理だって……心臓持たないって……!)
「もうすぐ、目的の洞窟に到着する」
「洞窟……?」
(おおっと、ダンジョンフラグ立ったー!)
「うむ。
山はアヤカシが多いでな。
洞窟を抜けて町へ向かうのじゃ」
「アヤカシ……」
(ミクラルの方だとモンスターって呼んでたよね?
呼び方バラバラなの、絶対ファンタジー世界あるあるだよねこれ)
「その洞窟には、アヤカシいないんですか?」
「……居る」
(居るんかい!! 普通に居るんかい!!)
「じゃが、儂も見たことはない。
ただ、噂だけは聞いとる」
「噂?」
「洞窟に迷い込んだ者は――
黒い大きな影に、頭から丸呑みされる。
そして、生きて帰れぬとな」
「うぇ……」
(完全に死亡フラグだよね!? それ!!)
「ハッハッハ。
所詮噂じゃ。
帰れないなら、誰がその噂を流したんじゃ? って話じゃろう?」
「そ、そうですよね……」
(理屈はわかるけど!! 安心できるわけないよ!!)
「それに、この洞窟にはアヤカシが近づかん。
本能的に、何かを恐れているんじゃろう」
「……」
(そういうのが一番怖いんだよね!?
「本能で避ける」ってヤバいやつのテンプレだよね!?)
思わず口の中の唾を、ごくんと飲み込む。
「油断するでないぞ。
何かあれば――迷わず逃げろ」
「はい……!」
そして、俺たちは洞窟の前に到着した。
じいさんは、一切迷うことなくその中へと歩き出す。
(待って、躊躇とかそういうのないの!?
もうちょっとこう、ビビってほしいよ!?)
慌てて俺も、
じいさんの背中を追って洞窟へと足を踏み入れた――。
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