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冬の寒さが本格的になってきたけれど、私の心は毎日ポカポカしていた。
登校する時も、授業の間も、放課後も。私の頭の中にあるのは、ユウキくんのことだけ。
キララ:「(手帳を広げて)えっと、次の日曜日はユウキくんと映画に行って、その次は受験のお守りを買いに行く約束……あ、楽しみすぎてニヤけちゃう」
ユウキ:「(後ろからひょいと覗き込んで)何ニヤニヤしてるの、キララ?」
キララ:「(驚いて振り返りながら)あ、ユウキくん! もう、びっくりさせないでよ。……今ね、次のデートの予定を考えてたの」
ユウキ:「(私の隣に座って、手を繋ぎながら)へぇ。僕との予定、そんなに楽しみにしてくれてるんだ。嬉しいな」
キララ:「当たり前だよ! ユウキくんと一緒なら、どこに行っても楽しいもん。あ、そういえば、さっきの授業で言ってたあのデザイン展、一緒に行かない?」
ユウキ:「もちろん。キララが興味あることなら、僕も全部知りたいし、一緒に行きたいよ。……君が楽しそうに絵の話をしてる時の顔、大好きなんだ」
キララ:「(顔を赤くして)もう、またそういうこと言う! ……でも、ありがとう。私のこと、ちゃんと見ててくれて」
かつてこの手帳の余白に、ミナトの試合日程や「今日は話せなかった」なんていう悲しい日記を書いていたことなんて、今の私には想像もできない。あんなに執着していたのが嘘みたいに、ミナトの存在は私の中で『終わったこと』になっていた。
放課後、図書室の窓を閉めていると、グラウンドから大きな歓声が聞こえてきた。
キララ:「(窓を閉めながら)……あ、サッカー部、勝ったんだ。良かったね」
一瞬だけ外を見たけれど、私の視線はすぐに手元のスマホに戻った。
画面には、ユウキくんから届いた『キララ、迎えに来たよ。図書室の前にいるね。大好きだよ』というメッセージ。
キララ:「(独り言で)……私も。私も、世界で一番、ユウキくんが大好きだよ」
少し前までなら、グラウンドで泥だらけになって笑うミナトを必死に探していたはず。でも今は、あのぶっきらぼうな声も、遠い世界の出来事にしか感じられなかった。
図書室のドアが開き、ユウキくんが入ってくる。
ユウキ:「キララ。お疲れ様。今日も頑張ったね」
キララ:「(満面の笑みで駆け寄って、腕に抱きつく)ユウキくん! 早かったね。……ねえ、今日はどこに行く?」
ユウキ:「(私の鼻先をちょんと突いて)今日はキララが食べたがってた、あのマシュマロココアのお店に行こうか。……あ、その前に。卒業してあっちの街に行ったら、二人でどんな部屋に住むか、もっと詳しく話そうよ」
キララ:「(感激して)……えっ、いいの? まだ合格もしてないのに」
ユウキ:「二人なら絶対大丈夫だよ。僕が君をずっと支えるし、寂しい思いなんてさせない。……あいつみたいに、君を不安にさせるようなことは絶対にしないから」
その「あいつ」が誰を指しているのか、私にはもうすぐにはピンとこなかった。
ミナトとの思い出は、読み終わって本棚の奥に仕舞い込んだ、二度と開くことのない古い本と同じ。
キララ:「(ユウキくんの目を見つめて)うん。私をこんなに大切にしてくれるのは、世界中でユウキくんだけだもん。……私、ユウキくんのことが、一番好き」
ユウキくんは満足そうに微笑んで、私の額に優しくキスをした。
その瞬間、私の心は完全にユウキくんで満たされた。
つづく