テラーノベル
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そんな生活が続いていたある日。
ほんの 小さいことがきっかけだった。
夜。
若井が先にリビングにいて、ソファーに座っていた。
涼ちゃんはキッチンで水を飲んでいた。
その時、若井が言う。
「……それ俺のだろ」
テーブルに置いてあった飲み物を指さす。
涼ちゃんは少し見る。
「え?」
「さっき買ってきたやつ」
涼ちゃんは少し困った顔をする。
「ごめん、知らなかった」
そう言って置こうとするが、
若井が少し強めに言う。
「いや普通わかるだろ」
その言い方に、
涼ちゃんの手が止まる。
「……ごめんって言ったじゃん」
少しだけ声が低くなる。
若井も少しイラッとしていた。
「最近さ」
「普通に人のもの触るよな」
その言葉に、
涼ちゃんが少し顔を上げる。
「そんなことしてない」
「してるだろ」
少しずつ声が強くなる。
静かだった部屋に、少しピリついた空気が流れる。
涼ちゃんは視線を落とす。
「……もういい」
そう言ってコップを置く。
そのまま自分の部屋へ歩く。
バタン。
ドアが閉まる。
若井も舌打ちまではしないが、少し苛立った顔をする。
「……はぁ」
ソファーに座ったまま、天井を見る。
しばらくして、
若井も自分の部屋へ入る。
バタン。
それから――
二人とも 部屋から出てこなかった。
リビングは真っ暗。
夜も遅くなる。
沈黙のまま時間だけが過ぎる。
しばらくして。
涼ちゃんの部屋のドアが、そっと開いた。
廊下に出る。
少しだけ迷う。
それから若井の部屋の前まで歩く。
数秒立ってから、
コンコン。
小さくノックする。
中から音はしない。
涼ちゃんは少し俯いて言う。
「……若井」
静かな声。
「さっきはごめん」
少し間。
「俺も言い方悪かった」
ドアの向こうはまだ静か。
でも涼ちゃんは続ける。
「……一緒に住んでるんだし」
「ちゃんとしないと」
少しだけ笑う。
「空気悪いの嫌だし」
廊下は静かだった。
その時、
ガチャ。
若井のドアがゆっくり開いた。
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RanJam
#病み