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そこから2ヶ月…。特になんら変わりない日常だった。が、美華の八尾への接触の回数が多くなっている。津雲はそれを見て、ニタニタしていた。八尾はなぜ津雲が笑っているのか理解できなかった。
外は、小雨がパラパラ降っている。もう6月である。八尾は、1日がとても短く感じていた。
1年生の頃は一日がとても長く感じていたのに。
「八尾君、ここ…教えてくれない?」
美華が数学を教えて欲しいと頼んできた。
「あー、ちょっと待ってね……」
美華は笑顔で答えた。本当によく笑う子だ。
八尾は人に教えるのが苦手なため、津雲にバトンタッチしようと後ろを向いた。
が、津雲は違う人と話をしていた。これではバトンタッチできない。そう思ったが、そもそも俺に頼んでいるので津雲に頼っても仕方ないのでは?と八尾は考えた。
「OK、どこを教えて欲しいの?」
「ここなんだけど……」
「あー、ここはね__」
その光景を見て、津雲はニヤッと笑った。
すると陽キャ達は、津雲に小声で言った。
「なんかいい感じじゃね?あいつら。」
「津雲…あいつ気づいてるのかな?美華が八尾に好意を持ってるってこと。」
「いや、全然気づいていないだろうな。あいつ恋に関しては鈍感だからさ。」
陽キャ達はあちゃーという顔をした。
「もったいないよな、せっかく好意もってるってのに。気づいてあげられないなんてよ。」 陽キャの1人が八尾を見つめている。
「ま、あいつもいずれ気づくだろ……」
授業の始まりのチャイムが鳴る。
「はい、皆席について〜。地理の授業やるよ〜。」
全員が席に着く。
「はい、問題集42ページの確認問題を15分間、時間をあげるから全て解いてね〜。」
先生はその間に、この前集めたプリントの丸つけをするらしい。
八尾は止まらずスラスラ解いていく。
津雲は一時的に放心状態だったが、答えを書き始めた。津雲は八尾ほど頭は良くないが、学年で言えば5番目くらいである。美華はといえば、もう解き終えるところまできていた。どうやら社会はすこぶる出来るらしい。
15分後、最後の1人が解き終わると同時に
「はい、この前やったプリント返すよ〜。」
プリントが返される、その間津雲は単語帳なんぞを読んでいた。
どうやら地名や気候帯などが曖昧らしい。
美華は、さっきの問題をもう一度解いていた。くり返しやることで力になるとはよくいうが、まさかここでやる者がいるとは。よほど勉強熱心なのだろう。八尾は一度勉強したら、ほとんど覚えているのでその必要がない。
「はい、今回は全問正解が3人います。」
そしたらクラスが誰?誰?とどよめきだした。当たり前だ。今回のテストはひねった問題が多数でたのだ。八尾も少し考えるほどだった。主に説明系が多かった。
「全問正解は、八尾、津雲、美華。この三人だ。」
クラス中から拍手がおこる。津雲は本当に嬉しそうだ。八尾と美華は微笑を浮かべていた。
放課後、外は酷い雨だった。
最初はパラパラだったのが、今はザーザー降っている。
八尾と津雲は風に傘をやられたため、シャッターの閉まっている店の軒下に避難した。
「すげぇ雨だな…」
「うん、傘やられた……」
遠くで雷鳴が聞こえる。それに混じって水たまりのパシャパシャという音が聞こえてくる。雨の音ではない。明らかに誰かが走っている音だ。
すると、T字路から美華が飛び出してきた。
なぜか裸足になっていた。片手に壊れた傘と靴を持っている。どうやら美華の方が被害は大きいようだ。
津雲と八尾は手を振って手招きをした。
美華は必死に軒下に避難した。
「もう…最悪…傘は壊れるし靴下濡れるし…私なんか悪いことしたっけ?…」
津雲は時計を見ている。時刻は4時を回っている。八尾は美華にタオルを渡した。
「ん〜ぱぁッ!はぁ〜スッキリした。ありがとう!」
津雲は美華に目をやり、こう言った。
「近くにコンビニあるけど、靴下買ってくるか?さすがに裸足で帰る訳にはいかないだろ……」
「ううん、大丈夫。私裸足好きだから。」
美華は足ぶみしながら答えた。
「そうか、風邪ひくなよ?さっきよりは少し雨弱まってきたから俺走って帰るわ。」
津雲は走り出そうとしていた。
「ちょっと、津雲が風邪ひくって!」
「あん?俺は風邪なんかひかねぇよ?」
「ひくわアホ!お前元々体濡れてたんだから!」
八尾は必死に呼び止める。が、津雲は聞こうとしない。
「風呂入るからいいって。じゃ、またな。」
「あ……」
津雲は凄いスピードで走っていった。
「行っちゃったね…」
裸足のままの美華が言う。
いい加減靴履いたら?そう思う八尾だった。
と、その時!
とてつもない光と共にバリバリバリ!っという轟音!
どうやらどこかに雷が落ちたらしい。
美華はあまりの衝撃に靴を落とし、八尾にしがみついた。雷が苦手らしい。
美華はハッと我に返ると、「ご、ごめん。つい……」
と言っていた。
「いや、気にしないで」と八尾は言う。
「怖いから…手…繋いでいい?」と美華は頬を赤くして言う。八尾は一気に赤くなった。が、八尾はうん。と言った。
美華が八尾の手を取る。美華の手はほんのり暖かい小さな手だった。
また遠くで雷鳴が聞こえる。繋いでいる手が少し強く握られる。
八尾は、雨が止むのを静かに待っていた。