テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
玄関を抜け、僕が真っ先に飛び込んだのは、いちばん近くにあった保健室だった。
息を切らしながら扉を開けると、中には見知った顔ぶれがいた。田中、高橋、井上の三人――いつもの友達だ。さらに、児童会長の小野さん、赤髪が目立つ山本さん、いつも元気でうるさいけど名前をまだ知らない太郎、そしてこの区で一番偉い区長、金森という男までが避難していた。
「よかった、みんなと一緒だ……」
友達のひとりが、安心したように肩をなでおろす。その気持ちは、僕も同じだった。
そのとき、田中が提案を口にした。
「この街を脱出するために、二人一組で別れて行動しよう」
手早く組み分けが決まっていく。田中は高橋と、山本さんは太郎と、井上は小野さんと。そして、僕は金森区長とペアを組むことになった。
だが、金森さんは眉を吊り上げ、怒鳴りつけた。
「私は救助が来るまで、1歩たりとも動かん!」
説得なんてできるはずもない。仕方なく、僕は通信機を手に取り、単独行動を選んだ。通信機は皆も持っている――それだけが、唯一の繋がりだった。
田中たちは2階と3階を、僕は1階を調査することになった。
まず足を踏み入れたのは「口論室」――学校で提案や議論をするための部屋だ。中を調べていると、机の引き出しの奥に小さな紙切れを見つけた。そこには、はっきりと「2310」と数字が書かれていた。
金庫のパスワードかもしれない。そう思って校長室を探し出し、約10分後、ようやくその部屋にたどり着いた。予想通り、そこにはダイヤル式の金庫があった。4桁の番号を入力すると、重たい音を立てて金庫が開いた。
中にあったのは……一丁のハンドガンと、いくつかの弾丸。
「校長って……サバゲーオタクだったのかな?」
苦笑しながらも、僕はその銃を手に取った。そのときだった。天井のどこかから、何かが叩きつけるような不気味な音が響いた。
田中か誰かのいたずらかと思った、次の瞬間。
天井が粉々に砕け、何かが、降ってきた。
その“何か”は、生き物とは思えない形をしていた。いや、それでも“生物”としか形容できない。心臓が跳ね上がる。僕はハンドガンを握りしめたまま校長室を飛び出し、必死で保健室へと戻ろうとした。
だが――戻る途中で、さらなる異変に気づいた。
ゾンビ。さっきまで校舎内にはいなかったはずの奴らが、いつの間にか校内を徘徊していた。恐らく、どこかの窓ガラスを割って侵入してきたのだろう。
保健室がもうすぐというところで、突然、悲鳴が響き渡った。
「助けてーー!!誰かーー!!」
井上の声だ。彼は確か、2階を調査しているはずだった。しかし今の声は、1階から聞こえた。
耳を澄ますと、資料室の方から声がしていた。僕は急いで向かった。
資料室の奥へ足を踏み入れると、そこには……信じられない光景が広がっていた。
井上が、大量のゾンビに囲まれていたのだ。
「うわっ……!」
僕は手にしていたハンドガンを構え、震える指で引き金を引いた。パンッという音と共に、ゾンビが倒れる。次々と狙って撃ち、何とか井上を救い出すことに成功した。
「小野さんとはぐれてしまったんだ! 太ちゃん、見てない?」
慌てた様子で井上――翔ちゃんが叫ぶ。
僕はうなずいて、言った。
「じゃあ、僕が北校舎を探すから、翔ちゃんは南校舎を頼む!」
言葉を交わす間も惜しみ、僕たちはそれぞれの方向へ走り出した。
何が待ち受けているのか、まだ誰も知らない――。
To be continued
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!