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「おでんの材料って何あるの?」
今、僕と畑葉さんはスーパーに居る。
母さんにおつかいを頼まれたからだ。
で、今日の晩御飯のおでんである材料を買おうと思ってるとこなんだけど…
いつの間にかカゴの中がお菓子だらけになっている。
犯人は畑葉さん。
と、僕…
でも8割は畑葉さんのである。
「あ、そういえば…これ、はい」
そう言ってこの前借りた分のお金を畑葉さんに渡す。
少し忘れていたのは内緒…
「ありがとー」
棒読みで受け取る畑葉さん。
海でBBQの時に返そうって思ってたけど忘れてたのは内緒内緒。
「ね、おでんってこれ入れる?」
そう言って畑葉さんが指差したのはまさかの『キムチ』
「そ…れは入れないかな…」
家庭によると思うけど、
おでんの具材としては見たこと無い。
「入れないか〜」
「じゃあこれは?」
『チョコレート』それは断じて違うと言い切れる。
「それじゃあ闇鍋になっちゃうよ…」
そう言うと畑葉さんの表情は疑問に包まれているように見えた。
多分、闇鍋が分からないんだろうな。
そう当たっているであろう予想を立てる。
「そもそも『おでん』って分かる?」
「…分かるに決まってるでしょ!!」
「あの〜、アレでしょ?ラーメンと一緒に食べると美味しいやつね!!」
そう誇らしげに言うが全くもって違う。
なんのことを言っているのだろうか。
「全然違うけど」
「や、今のは冗談だから!!」
「えっとえっと…」
『えっと』って言っちゃってるし。
「おでんはこういうやつだよ」
そう言って畑葉さんにスマホの画面を見せる。
画面には『おでん』の画像がある。
当たり前だ。
「そう!!こういうのって言いたかったんだよね〜!!」
明らかな嘘をつきその場を過ごそうと思っているところ悪いが、
先程の時点で既に無理だったと思う。
「え、でもここに『自分の好きな具材を入れるのも良し』って書いてるよ?」
そう言いながらおでんのレシピであるサイトの序文を口に出して読む。
「好きな具材ってことはチョコレートもいいんでしょ?」
「いやチョコレートは具材じゃないし」
「ほら、材料買ったから帰るよ」
そう言いながらレジに向かう。
と、
「待って!!これは?」
そう言って3つ入りのアレを3パック買った。
合計9個。
これなら…まぁ、いっか。
「ちゃんと買ってきてくれた〜?」
そう言いながら袋の中を漁る母さん。
最初の一言目は
「何これ、お菓子ばっかじゃん!!」
だった。
「ちゃんと自分のお金で買ってるから」
そう僕が言うと畑葉さんが何かを言おうとしたのか口を開ける。
から同時に僕は畑葉さんの口を手で塞ぐ。
「ならいいけど」
晩御飯の時間まで昨日のように僕の部屋で待つことになった。
「お菓子って私、自分のお金で買ってないよ?」
言うと思った。
そう思いながらも
「いや僕のお金で買ってるから」
と返す。
「え、なんで?」
「なんでって…」
「分かんない」
「何それ」
そう言いながら畑葉さんは笑う。
いつもの笑顔で。
というか本当になんで自分のお金で畑葉さんのお菓子を買ったのかは分からない。
けど多分、僕は人に奢るのが好きなのかもしれない。
なんだか募金した時と同じ気分になれるから。
「ね、これ買ってきて正解だったね!!」
そう言いながら畑葉さんは晩御飯であるおでん。
に入っている餅巾着を頬張る。
この餅巾着こそが畑葉さんが最後の最後に買ったもの。
「そうだね」
返事しながら同じく餅巾着を頬張る。
とニヤニヤした家族の表情が目に映る。
「何?」
そう聞けど、
「べっつに〜?」
とわざとらしく答えるのみ。
「私、『餅巾着』も好きだけどこれも好き!!」
そう言って箸で持ち上げているのは『こんにゃく』
でも僕はこんにゃく嫌いなんだよね〜…
そう言おうと思ったが、
理由を笑われそうな気がして言うのをやめた。
僕が『こんにゃく』を嫌いになった理由は、
子供の頃に喉に詰まったことがあるから。
当時のおでんのこんにゃくは細長く切ったものを入れていて、
なぜだか幼い頃の僕はすすってみたくなり挑戦し、案の定喉に詰まらせた。
その時に母さんが爆笑していたのが1番鮮明に覚えている。
あぁ嫌な記憶だ。
そんな昔の嫌な思い出を思い出していると
「古佐くんは何が好き?」
と聞かれる。
やっぱり僕は
「『はんぺん』と『大根』」
これが一番好きだ。
「白&白だね」
「何言ってんの」
素でそんな声が出てしまう。
だって何言ってるか分からなかったから。
白&白?
意味が分からない。
「だって『大根』も『はんぺん』も白いじゃん!!」
そう言われ、
「あぁ〜…確かに」
と声を漏らす。
こんなのに気づかなかったなんて…
なんだか悔しい。
「ふ〜…お腹いっぱい……」
そう言いながら畑葉さんはアニメのようにお腹をさする。
「ね、忘れてないよね」
アレ。
「何?」
嘘でしょ…
あんなに楽しみにしといて忘れてるとか有り得ない。
「何ってレモネードソーダのことだけど」
「忘れてたでしょ」
そう僕が言うと少し考えた後、
「忘れてないから!!」
と言う。
「いーや絶対に忘れてたね」
「忘れてない!!」
そんな馬鹿なやり取りを数回くらい繰り返した時に
「言い合ってたら喉乾いてきた…」
と畑葉さんは声を零す。
まんまと僕の策略にハマってくれたようだ。
「はい、これ」
僕は畑葉さんにレモネードソーダを渡す。
畑葉さんのはレモネードソーダ。
僕のはレモネード。
後で味変で蜂蜜を入れる予定だ。
どちらのコップにもストローはついている。
僕から受け取ったとほぼ同時に畑葉さんはすごい勢いでレモネードソーダを飲み出した。
「美味しい!!」
「酸っぱくて、苦くて、でも爽やか!!」
腕を激しく振りながら『美味しい』ことを体で表現する畑葉さん。
見てて面白い。