この物語は、太宰さんがポートマフィアに戻るというお話です!
なんで戻ったの?という理由は私も如何創ったらいいか、分からなかったので、取り敢えず森さんが言ってた「探偵社員の一人をポートマフィアに移籍」というのが太宰さんになった。というので、話を進めたいと思います!
見る人によっては、腐気味かもしれないし、語彙力ないのでご注意を!
それでも大丈夫な方は↓↓↓
森さんから贈られた外套が入った紙袋を持って、私は更衣室に這入る。後ろの方から扉が閉まる音が聞こえると、今度は鍵の閉まる音が室内に響いた。“彼”が気付かないような息に近い大きさで、私は溜め息をつく。刹那、背中に鋭い痛みが走る。私は胸ぐらを掴まれ勢い良くロッカーに叩きつけられた。外套が入った紙袋が、ドサッと床に落ちる。
「手前……マジで何しに此処に来た」
先程の執務室の時での態度とは違い、中也は私に対する殺意を剥き出しにしていた。
「質問に答えろ…!」
怒りを帯びた彼の声が耳に響き、胸ぐらを掴む力が少し強くされて苦しくなる。流石に此の儘は何も進まないと思った私は、何かしら中也に答えることにした。
「……手、放してくれないかい?」
そう言葉を放つと、私の顔の直ぐ側のロッカーに彼は拳で衝撃を与える。その振動が躰を伝って感じた。中也が手を離すと、其処には見事にくっきりと拳の跡が残され、凹んでいた。
「次は無ェ……佳いか?もう一度聞いてやる」
低く響く声で彼は云うと、カッと目を見開いて、
「手前は何しに此処に来た」
「………」
私が沈黙している間、中也の苛立ちは募っていき、結果再び苦しくなる。私は答えるのにも面倒くさく感じた。大きく溜め息を付き、中也に視線を向ける。
私は先刻中也の懐からスったナイフを取り出し、背中に隠しながらナイフを握り直す。
「…!!」
彼の首元を狙ったが、それに気付いた中也はナイフを避けるように、後ろへと勢い良く下がった。私は小さく笑みをこぼす。ナイフを指先で回しながら、
「相変わらず君の肌は殺意には敏感なのだねェ…蛞蝓君♪」
その言葉に中也は、
「手前こそ、相変わらず人の物スってンなァ……止めろよ糞鯖野郎」
ピリついた空気が室内に広がる。私は再び溜め息をついて、
「まッ…佳いや、此れから着替えるから邪魔しないでね中也」
そう云いながら私は中也に向かってナイフを投げる。中也は持ち手を丁度良く掴んだ後、眉をひそませながら舌打ちをした。
「疾く着替えろよ」
中也は椅子に座って私から顔を逸して云った。その行動に気色悪さを感じる。私は砂色の外套を脱ぎながら、
「一寸……昔は中也の家に泊まりに行って、偶に一緒にお風呂入ったりしたんだからそう云う気遣い止めてくれる?逆に気持ち悪い」
吐き捨てるように云った言葉に、中也は私を睨んだ。彼の苛々が募っていく事に愉悦を感じながら、私は着替えた。
洋風の襯衣に黒のズボン。そして私は森さんから貰った黒い外套を羽織った。予備の包帯を右目に巻く。その着替えの一つ一つの行為に、私は倦怠感を覚えた。紙袋に、元々私が着ていた服を入れていく。最後に砂色の外套を手に取った。少しの間、外套を私は見つめていた。溜め息に近い息を吐く。
「此れね____」
【私は此の外套に腕を通した瞬間、初めて何かが変われるかと思ったんだ。その日初めて只羽織っていただけのあの外套が、あんなにも私に疲れを与えていたのだと判ったよ。私は朝が嫌いだ、死ねなかったというのが突き付けられるからね。それでも朝起きると、少し視線をずらすだけで此の外套が目に入る。少しだけ…今日を頑張ってみようかなっていう気力が起きるんだ。流石に其処までじゃないけど、此の外套にはあの頃の私が詰まっている……】
私は語った。云いたくなかったことが、何故かスラスラと口から出た。話していく内に、引っ張っていた何かが知り減っていくのが判った。
「…………」
中也は何も云わず、只々私の言葉を聞いていた。
砂色の外套を優しく抱きしめた後、紙袋に入れる。私は立ち上がって、椅子に座った儘の中也に云った。
「……それじゃあ“首領”の処に戻るよ」
「駄目だ」
「はぁ…?何故?」
「まだ俺の質問に答えてねェ……」
「質問?嗚呼…あれか……」
「もう一度聞く」
中也が言葉を発する。
『手前は何しに此処に来た?』
「____…」
自分でも、本当に何がしたかったのか判らなかった。折角織田作に生きる理由を与えて貰ったというのに。手に入れた新しい居場所だったというのに。私は其れを自分の手で壊したのだ。今となって考えると、矢張り私は如何かしていると思う。それなのに、私はあの時あれ以外の選択を思い浮かぶ事ができず、自分で堕ちていった。自業自得だ__。
そう考えた瞬間、カッタァで切り離されたかのように、今まで自分を引っ張っていた何かが消え、私の心は鮮明になり、色彩が一つもなくなった。
そうなった今、何故私があの行動をとったのかという理由が直ぐに出てきた。息を小さく吸う。
「あの場所を守る為だ」
「守る?」
私の言葉が意外だったのか、中也は目を丸くする。胸倉を掴む力が微かに弱まった。
「嗚呼……本来探偵社というのは、社員全員の力が共に重なった時、探偵社としての力が発揮される」
「だから社員が一人も抜けては、ならないのだよ」
少しの沈黙が続く。そして過ぎ去った後、
『__それは手前が抜けたって同じだろ』
中也が発した其の言葉に、思わず私は声を漏らす。今度は私が目を丸くした。
「おなじ……?」
「…?嗚呼、」
中也が首を傾げながら云った後、再び少しの沈黙が続く。すると中也は何かに気付いたかのような表情をし、
「で?結局手前、マジで何しに来たンだよ」
「いや…だから……先刻云った通り…」
「はぁ?何云ってンだ…?其れは別に手前も同じだから理由にはなンねェだろ!」
作った笑顔が、彼によって小さくなっていく。中也のその言葉が、何度も何度も頭の中で木霊した。
(私も____同じ……)
息を吸うごとに肺に何かが溜まっていって、空気が自分に纏わりついているように重かった。笑顔をもう一度無理やり作る。少し引きつっているようで、上手く笑えていないように感じた。それでも私は、彼に聞いた。
『君には私が……そう見えるのかい?』
「……!」
中也は目を丸くして私から視線を逸した後、「チッ…」と舌打ちを響かせて云った。
「嗚呼”そうだよ!俺にはそう見えてた!“前の手前”はな…!!」
軽く逆上したような云い方で、中也は頭をかきながら云う。
「ふふっ…そうか、」
自然と笑みが溢れる。
「何笑ってンだよ、気持ち悪ィな…」
「ふふっ…んふふふ、別に何でもないよ」
笑みをこらえながら私は云う。それを見た中也は軽く私を引いて後ずさりをしていた。
「じゃあそんな中也に一つ“お願い”」
「おねがい…?」
「嗚呼」
後ろに手を回し、中也に顔を近付けて私は云った。
『___私に生きる理由を与えてくれ』
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