「おはようございますイギリスさん」
「,,,,あぁ?」
見上げると見知らぬ天井。ツンと鼻に差した消毒の匂いでここは病院なのだと分かった。
イギリスにはここ数時間の記憶がない。ゆっくりと頭を抑えながら身体を起こす。
「ああ大丈夫です寝てても。ゆっくりしてくださいね」
「もういい。なんだ、何があった?」
「,,,,お話したいことは沢山あるのですが、お先に検査をさせてもらってもよろしいでしょうか?」
「え?それは構わないが、」
「分かりました。準備をしてきますのでそれまで」
医者は廊下に手を差し出した。
「ご友人と歓談を」
「やっほイギリス」
「,,,何の用だ」
「ひどいなぁ。ここまでお前が起きるまで待ってやったってのに。」
「,,,?,,,,,,!アメリカ!それに、」
「そうアメリカと秘書くんはもう先に帰らしたよ。お前の仕事が残ってるわで秘書はボロボロだしアメリカだって暇なわけじゃない」
「,,,まあそうか」
「で?そーんなにイギリス情勢は悪いわけ?なら会議で言えりゃいいものを、」
「そうだな」
ように素直なイギリスの返事を聞いてフランスはキョトンとした。そして次に自分の頬をつねって再度確認する。
「,,,イギリス情勢は悪いのか?」
「いや別に」
そしてカレンダーを見る。まだ12月だ。
「何か」
そう言いかけたがイギリスは遮る。
「もう帰ってくれ」
その様子に何も言い返せず、フランスは振り返りながらもドアを閉めた。パタンという音がした後にイギリスは自らの手を見つめる。ひたすらにボーッとしていたころだろう。またドアが開き、医者が現れた。
「準備ができたしたので、どうぞこちらへ」
しかし、イギリスは動かなかった。否、動けないようであったのだ。医者はしばらく見つめていたが奥からすぐに車椅子をとって座らせた。
「ゆっくりでいいんです。ご自分のペースで私に言ってください」
「あぁ、ありがとう」
その後淡々と作業が続けられていく中、当の本人はあっさりとしているのに機械を触っている者たちはザワザワし始めるという珍事が起き出す。そんな状況を見てもイギリスは何も変わらなかったのだ。そして全ての検査が終わり担当医が目の前に現れた。
「いつぐらいに帰れるんだ。あいつに仕事を任せてしまうと泣き出してしまうからな。早く帰ってやらないと」
「帰ってもいいですが、聞きたいことがありまして」
「,,,?なんだ」
「えっと、その,,,」
ごにょごにょとした担当医にはっきりと言った。
「言え」
「祖国はこれから滅ぶということでしょうか」
「,,,説明しろ。どうした」
「検査いたしました結果、人間でいう【衰弱】の症状や状態なのです。一体なにが起こるのでしょうか。聞いております、国の状態は貴方の体の状態だと。ということは,,,」
「心配するな」
ポンと肩に手を置いた。
「知人に話を聞く。だが決して滅ぶなどということを考えるな」
「は、はい」
屋敷に帰ると秘書が待ち構えていた。しかし、いつもの心配そうな顔ではなく今回は厳格な態度で門にて仁王立ちしていたのだ。
「聞きました」
「そうか」
「,,,ですがサーの口からは聞いておりません。どうぞ、我が耳にお聞かせください」
「とりあえず中に入るぞ」
中に入ると3人の兄がリビングにいた。しかしいつもと態度は変わらない。ウェールズがおかえりと言って手を振り、北アイルランドが微笑みスコットランドは背中だけを見せる。この3人にも伝わっているはずであった。だがいつもと変わらないということ自体が今のイギリスにはありがたいことだったのだ。安心したのかまたフラッと立ちくらみをする。
「,,,,,部屋までおくるよ」
そこをウェールズが支え、後ろから北アイルが階段から落ちないようについてきた。
「じゃあとはたのむね〜」
「はい」
バタンと扉が閉じると秘書はまたイギリスの顔をしっかりと見た。どうやらもう話すしかないようだった。
「,,,,,陛下にはまた俺からいうから」
「衰弱,,,,,?」
「らしいな」
「どういうことですか、これから何か起こる前兆という,,,,,ことなんですか」
不安そうに見つめてくる秘書にハハと掠れている声を上げた。
「ならもうとっくに情勢は変わってるだろ。前兆なんてありやしねぇよ。それが国なんだからな」
そういうと秘書は黙ってしまった
恐らく医者も考えていたことを秘書は思いついたんだろう。あまりにもその態度がもどかしく感じ、イギリスははっきりと答えた。
「国が残っても俺は、死ぬみたいだな」
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