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「ただいま〜!」
元気よくアジトの扉をバンッと勢いよく開ければ、トラゾーは困った顔をしながらも笑いながら返事をしてくれた。
「おかえり。…あれ、どうしたのその袋?」
トラゾーは俺たち2人の持っている少し大きめな袋に目を移した。
よくぞ聞いてくれた!!とでも言うようにしにがみは自慢げにそれをトラゾーの目の前に差し出す。
「見てください!これ今日行ったところの人からご飯もらっちゃって!!」
「そーそー!」
自慢げに言う俺たちにトラゾーは「おー!」と口を大きく開けながら喜んでくれていた。あまりの喜びように、俺たちも嬉しくなってしまう。 …まぁ、そりゃあそうだろう。
ここ最近は本当に貧相な生活をしてきた。生活を繰り越すためにベッドをわざわざ売って…今まで溜まっていた宝も少しだけ売ったり…。一応まだお宝はあるけど、もうこれ以上売ってしまっては”後に帰れないかもしれない”という判断で俺たちは節約しまくりだ。
「じゃあ、あったかいうちに食べておこうか。」
トラゾーはそう言いながら、割り箸をパキッと音を立てて二つに割る。そうして次々と口に含んでいく。久々の飯を、流石に美味しそうに食べていたトラゾー見て、俺たちも何だか嬉しくなる。
「……あ、そうそう。トラゾーに提案があるんだった。」
ご飯を食べ続けてハムスターのようになっているトラゾーに俺は一言そう話した。トラゾーはもぐもぐとしながら身振り手振りで「どうした?」とでも言っているような動作をしたため、そのまま会話を続ける。
「───今日行った家の人に、当分ご飯作ってもらうのってどうかな?」
そう言った途端、相手の顔は少し険しくなる。そうして、カタッと割り箸を机の上に置くと俺に目線をまっすぐと向ける。
「………ぺいんと、あの約束は───」
「───わかってる!!」
トラゾーのその後の言葉を言わせないために俺は途中で遮る。
「………わかってるよ。」
───俺たち盗賊団には、人に迷惑のかかることをしてはいけないという掟がある。もちろん、この一つだけではない。もういくつかの掟がある。それを俺たちは”約束”と称している。
雰囲気を感じ取ったしにがみは、トラゾーを見据える。
「───善人に手を出してはいけない…」
ふと、しにがみはトラゾーを見据えて掟を喋り始めた。
「犯罪に手を染めてはいけない、明日があると思わない、そして───・・・」
───必ず、人様に迷惑をかけてはいけない。
以上が、俺たちの”約束”だ。もちろん、しょうもないと思う人だったり、当たり前だって思う人は何人もいると思う。…それでも、当たり前にするまでが難しいのだから。これさえ守っておけば、何しても許させるってわけではないけれど…それでも、俺たち盗賊団はある程度自由だ。
この前のしにがみが監視カメラで自撮り事件も、悪事を暴くために金目のものを盗んでるところを映さないためだ。
「……でも最近、俺たちはいろんなところから狙われてる。もしそのハンターが…その人だったとしたら取り返しがつかなくなるぞ。」
───俺たちの最後の掟。それはこの盗賊団の中でしか知らない掟。それは…
“ハンターに殺されないこと”だ。