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#創作BL
灯依
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ruruha
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「レオンはクレハに合わせて入学を3年遅らせたんだろ。年齢条件ギリギリの16歳まで。それなのにお前ときたらリズちゃんの事ばっかりで……婚約者に存在を忘れられてるレオンが不憫になるな」
「忘れてませんからっ!! 適当なこと言わないで下さいよ」
ルーイ先生のイジワルな揶揄いに対して、クレハ様は激しく狼狽えていた。当然、主が殿下のことを忘れているだなんて事はあり得ないが……ここまで殿下の話題を避けていた自覚があるようで、そこを先生に指摘されたため、このように過敏に反応しているとみた。
クレハ様のために入学を早めた私と遅らせた殿下。真逆の対応ではあるが、お互いの立場や役割を考慮した上で出した結論なのだ。それに、クレハ様が殿下の入学に対して口にしなかったのは、ご本人なりの理由があった。
「だってほら……私も14歳になりますから。学園でまでレオンにおんぶにだっこは情けないかなって。あまり彼を頼らないようにしようと思っていたんです」
「リズちゃんはいいの?」
「リズはウチの家の人間でもありますから……それに同性なので」
「そうねぇ……まあ、お前の言いたい事が分からんでもないよ。学園には貴族家の子女たちが大勢いる。そんな中で常に王太子に守って貰う婚約者なんて格好付かないし、舐められたくないわな」
クレハ様は静かに頷いた。幼い頃に比べて精神的にも強くなられたが、元来の性格まではなかなか変えることはできない。相変わらず主は社交が苦手で、必要最低限の外出しか行わない。身辺を警護する側からしたら非常にやりやすいことだが……今後の事を考えると、もう少し交友関係を広げてもいいと思う。いまだにクレハ様のお姿を見たことがないという貴族たちも大勢いるのだ。
そんな現状をご本人も気にしていらっしゃるので、学園の入学をきっかけに改善しようとしているのだろう。私もその志は支持しているが、無理をして欲しくないという相反する気持ちもあった。
「でもな、レオンたちの側になって考えてみな。そうやっていきなり距離を取られると、余計に心配をかける事になるぞ。頼るべきところではしっかり頼る。そして何より相談をきちんとすること」
「はい……」
やはりルーイ先生は頼りになる。彼の言葉は不思議と真っ直ぐに心に響く。主も……レオン殿下ですら、先生の言う事には大人しくを耳を傾けて従う。さすが『先生』である。
「お前自身ここ数年でかなり腕っぷしが強くなったから、その辺の輩に遅れを取ることはないだろう。でも、油断は禁物だ。安心してるところにってのが一番怖いからな」
「はい、ルーイ様。私少し調子に乗っていたみたいです。それに平穏な日々が続いて腑抜けていました。学園に入学する前に指摘して頂けて良かった」
「自立心を持つのは悪いことじゃない。だけど、お前の周りには心強い味方が大勢いるのも忘れないようにってこと。ケースバイケースだよ」
「はいっ!」
「レオンたちももうじき戻ってくる。そうすればお前の不安も和らぐだろう」
先生はクレハ様の頭を撫でた。学園への入学を控えて、主も不安定になっていたようだ。
レオン殿下は現在公務で首都を離れている。ジェラール陛下の名代として、北部のルブロイ地方にある軍の司令部に視察に行っているのだ。
学園の入学に間に合うように帰って来られる予定ではあるが、このように忙しい殿下を目の当たりにしているため、クレハ様の中でますます頼ってはいけないという感情が大きくなってしまったのではないだろうか。
殿下がここ最近特に忙しくなさっていたのは、学園に余裕を持って通うために、可能な限り仕事を前倒しにしているからだとセドリックさんから聞いた。心配をさせたくなくてクレハ様には秘密にされていたが、逆効果だったのかもしれないな。
トントン……トントン……
突如店内に鳴り響いた音。引き続き雑談に花を咲かせていた私たち3人は、弾かれたように音のした方向へ振り返った。音は店の入り口から聞こえてくる。誰かが外から扉をノックしているようだった。
「……ルーイ様、休業中の看板出してますよね」
「もちろん。理由を書いた黒板まで置いてある。それでもたまーにあるんだよね。無視してたら諦めるよ」
『とまり木』は人気店ではあるが、休みが多いことでも有名だった。常連の客はその辺りの不便さにも慣れたものだが、時折このように休業中のお知らせを出していても強引に入ろうとしてくる客がいるらしい。
トントン……トントン……
放っておけば諦めて帰るという先生の予想は裏切られ、扉のノック音が鳴り止む気配はない。まるで店内に私たちがいるのが分かっているようで怖気立つ。
「俺たちの話し声が外に漏れていたのかもしれないな。しょうがない」
先生は椅子から立ち上がると、入り口に向かって歩を進めた。このままでは埒が明かないため、訪問者の対応をすることに決めたようだ。
「クレハ、お前は念のため奥の部屋に行ってろ。リズちゃんも扉から充分に離れていて」
「はい」
先生はドアノブに手を掛けると、慎重に内鍵を回した。ノック音はいまだ鳴り続けている。最後にもう一度先生がこちら側へ視線を向けられたので、私たちは無言で頷き合った。心の準備はできた。先生が扉を開けると、ドアベルの音がカランと鳴った。
招かれざる客の正体が明らかになる――――