テラーノベル
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「ごめんね。いい大人がバカみたいに泣いて。きっと化粧が落ちてひどい顔になってるよね」
恥ずかしさを苦笑いでごまかした。
「琴音の顔、化粧しててもしてなくても、ずっと可愛いと思ってた。今もすごく、可愛い」
顔がポッと赤くなるのがわかった。
そんなこと、大好きな人に言われたら、つい嬉しくて調子に乗ってしまいそうになる。
「龍聖君……私のこと、本当にずっと想っててくれたの? 何だか私……まだ夢を見てるみたいで」
さっきから地に足がついていなくて、ふわふわ浮いている感じがする。
「信じてもらわないと困る。俺は、高校時代からずっとお前が好きだった。本当だ」
「う、うん」
「あの頃、俺、気づいたら琴音のことばかり考えてた。お前がいれば目で追ったり、なのに目が合いそうになったら見てないフリをしたり。碧以外のやつと話してたらヤキモチ妬いてみたり、今考えたらバカだな」
全く同じだ。
私も龍聖君に同じことをしていた。
青春の1ページみたいな甘酸っぱくて淡い恋心。
「ただ……鳳条グループの後継者になるための勉強を始めてたから……そっちも色々大変で」
「そうだったよね。龍聖君はいろんなことを誰よりも頑張ってた」
完璧だと思うのに、学校の勉強も、お仕事のことも、バスケも、まだまだ全然足りないって……いっぱい努力してた。
とにかく、とことん根が真面目なんだ。
そんなところも、私は大好きだった。
でも、龍聖君自身はものすごく大変だったんだろう。まだ10代の青年は、いったいどれだけのプレッシャーを背負って生きていたのだろうか。私達は仲間であっても、そのことだけはわかってあげることができなかった。
「もちろん、俺だけが特別じゃない。みんなも一生懸命頑張ってた」
「でも、やっぱり……龍聖君の重圧とは違うよ」
「『ホテル リベルテ』に関わる仕事ができることはすごく楽しみだったし、何の迷いもなかった。だけど、まだ高校生だった俺には、鳳条グループの全てを背負うことに、時々不安になることもあったんだ」