三連休最終日の朝。
拓人が目覚めると、女は既に起きているようで、ベッドに姿はない。
(シャワーでも浴びてんのか? そういや、昨日は帰ってから即寝してたな……)
彼は気だるそうに身体を起こし、髪をクシャっと掻き上げながらベッドルームを出た。
冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出し、メインルームのソファーに腰を下ろすと、バスローブを羽織った優子が入ってくる。
「なぁ」
拓人をチラッと見やった後、ベッドルームに入ろうとした女を、彼は呼び止めた。
「なっ……何よ」
狼狽した表情を覗かせた優子は、足を止めるが、再び歩き出した。
「おい、待てよ。何か忘れてないか?」
「わっ……忘れてる事なんて……ないしっ!」
適当に言い繕う優子に、拓人は立ち上がり、ゆっくりと女の側に近付いていく。
「…………あんたの身体を……俺がメンテナンスしないとならないだろ?」
口角の片側を器用に吊り上げ、浅ましい笑みを湛える拓人。
だが彼の本音は、優子が、あの二日間で雰囲気が変貌した原因が知りたい。
「メンテナンスなんて、しっ……しなくていいし!」
拓人がジリジリと距離を詰め、女は足掻くように口答えしながら後退りする。
「あれ? あんたは俺のヤリ友だろ? ヤリ友の言う事は、ちゃんと聞かないとな?」
彼は女を壁際まで追い込み、キリッとした瞳は、怯える小動物のように揺らしている。
腰に腕を回し、グイッと引き寄せると、女の首筋を甘噛みした。
「んあぁっ…………ちょっ……まっ……待っ──」
「待たねぇし」
バスローブの胸元を、くつろげようとしている拓人の手が、ピタリと止まった。
胸元から見えそうで見えない、絶妙な位置にある鬱血。
(これは……)
赤黒い痣を見た瞬間、焦燥と怒りに似た邪念が、拓人の中で急速に湧き上がる。
(アイツが…………この女に付けたのか……?)
情事の痕跡を見て、動揺してしまうのは、彼にとって初めての事。
「なっ……何すんのよ!」
「…………」
不気味なほどの笑みを消した拓人は、優子を抱きかかえると、無言のままベッドルームへ入っていった。






