テラーノベル
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レイさんの表情が変わった。細い眼差しで私を見る。
(もしかして……)
彼は、なにか考えているふうにも見えた。
思いもよらない表情に、私の鼓動は期待で高鳴った。
レイさんに打ち明けると決めたのは、彼がいい人そうだからと、もうひとつ。
日本に長期滞在するくらいだから、日本人となにかつながりがある気がしたからだ。
どれくらいの時間、お互いが沈黙していたのかわからない。
閉め切った部屋の暑さが気になりだした時、彼がぽつりと言った。
『会ってどうするの?』
『……え?』
『だいたい、L・Aがどれくらい広いかわかってんの?
そんな簡単に会えるわけないじゃん』
柔らかかった口調が変わり、彼の声音が低くなる。
驚きに言葉を失う私に、レイさんは冷たい笑みを見せた。
『会えるわけないし、相手はきっとミオの顔も覚えてないだろ。
そんな相手、探そうとするだけ無駄だと思うけど』
私は呆然とした。
優しくて素敵なレイさんのイメージが、ガラガラと音を立てて崩れていく。
そんな私におかまいましに、彼は大きくため息をつくと、ふすまに歩み寄った。
『っていうか、いつまでいんの。
なにかわかんないことがあったら聞くから、もう出てって』
ショックで動けない私は肩を押され、廊下に追い出される。
状況が理解できない私の前で、ふすまが閉まった。
(え、なに……)
視界が閉ざされてもなお、私は立ち尽くしたまま動けない。
だけど一分もすれば、徐々に奥の奥から怒りがこみ上げた。
(……なんなの、なんなの……!)
言われた言葉が頭を巡り、胸を抉られた気持ちになった。
私だってわかってる。
会える可能性なんてゼロに等しいし、会えたとしても私のことなんて忘れてるかもしれないって。
それでも、やっぱり会ってみたい。
英語を勉強したのも、コツコツ貯金したのだって、全部そのためなのに。
(もう、話すんじゃなかった……!)
私は自分の部屋に駆け込んで、勢いよくドアを閉めた。
(なんであんなこと言われなきゃいけないの……!)
悔しくて苦しくて、憤りをどうしていいかわからない。
「最低、レイなんて最っ低!!」
私はベッドに飛び込み、うつぶせになって叫んだ。
あぁ、これから先が思いやられる。
あんな人が隣の部屋に3か月もいるなんて、本当最悪だ。
ベッドでバタバタしていたら、隣で物音がした。
びくっとした私は、一瞬枕から顔をあげる。
(……もしかして、叫び声が聞こえたのかな)
怯みかけたけど、私はすぐに開き直った。
どうせ嫌われたみたいだし、私だってあんなやつ嫌いになってやるんだから。
(レイなんて知らない。 絶対お世話なんてしてあげないんだから)
心の中でつけていた「さん」付けを取っ払い、私は憤りのまま枕を壁に投げつけた。
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