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「───・・・なんか、って?」


まるで質問の意味がわからない、とでも言うようにぺいんとの質問に対して微笑で質問を返したが、ただ相手には眉間にシワがよっただけだ。幾分かの不機嫌そうな顔は、時間が経つごとにつれ少しずつ険しくなっていく。

けれど、自分自身でもちゃんとわかっている。この質問からは逃げない───逃げられないよう雰囲気という名の厄介ものに囲まれている。


「わかるだろ、俺が何言いたいかなんて。」


ぺいんとの少し怒った顔や口調で、それを見た俺は「ああ、」と心の中で言葉を吐いた。本当、こういう時こそ分からなければいいのに、なんて思ってしまう。

ぺいんとが何を言いたいかなんて分からなければ、今の雰囲気が分からなければ、みんなのことがわからなければ…。なんて、幾度と願った叶わぬ願い事であり、哀れな思いであるとは分かっている。…いや、こう分かってしまうこともわかりたくない。


「…心当たりがある部分はあるよ。でも本当にわかんないところだってある…と思う。」


───自分のどこがおかしいか、なんてすぐにわかる。今言った言葉だって何を言ってるのかさっぱりだ。自分でさえもわからなければ当然のように相手にもわかるわけがない。

意味のわからない返答に、相手はますます顔が険しくなっていき、最後には深いため息を吐いた。


「…最近のトラゾーは、なんか凄く消極的だよ。前みたいにツッコミも、ボケもしなくなって…。」


ラーメンから出ている温かな白く染まる湯気は、いつの間にか透明度が高くなり、温かさもそれと同時に消えてゆく。ラーメンのスープはオレンジと茶色の混じった色をしており、暖色系の色だからか体も暖まるような錯覚を感じる。

時間が経てば経つほど、他の人はラーメンのスープがはっきりと見えるほど具材は胃袋の中へと消えていく。そんな中、俺たちのラーメンが減ることはさながら時間が経つのと変わりえなかった。

ラーメンが冷えると同時に、俺の心もなぜか冷たくなっていく。鼓動は微かに速まり、息遣いが荒れ、変な汗が背筋を伝い姿勢を整える。

肩で息をする俺は深呼吸を数回してから笑顔でぺいんとの顔を見た。


「───だぁいじょうぶだよ。羅生門の制作で忙しいだけだから。ありがとな」


そう言うと、ぺいんとは微かに目を見開いた。が、すぐにそれは先ほどのように眉を顰め、悩むような顔をした。そんな彼は下を俯き、レンゲを手に取ってラーメンの皿を一周、ニ周、三周…と、ラーメンのスープをひたすらにクルクルと混ぜ続けていた。そんな彼の顔には葛藤の表情が現れていたが、ふと覚悟を決めたかのようにこちらを見る。

まっすぐな視線で力強く、黄色くも逆光のせいで暗く見えるその瞳に、なぜか焦燥感を覚えた。


「───・・・コメントのこと?」


どきり、と心臓が跳ねたような気がした。変な汗が頬を伝い、ツー…と首筋を通って服の中へ潜り込む。暑いせいなのだろうか冷や汗なのだろうか…。よくわからないけれど、確実にいいものではなかった。

何かスポーツをし終わった後の爽快感も、達成感からも、どれでもない。

ただ、苦しさから胸を抑えた。


「ちょっ、大丈夫?”あれ”…じゃ、ないよね…?」


胸を抑えた俺に、ぺいんとはかなりの焦った表情でこちらの顔を覗き込んでいる。俺はそれを手で制し、動悸が治ったところで顔を上げた。


「大丈夫!それに、コメントも何もないよ!俺らのリスナーはいい人ばっかだしね」

「いや、リスナーじゃなくて───!」


何かを言いかけたぺいんとは、ふいに口を結えた。───視線だ。周りの客の視線が、痛いほどに俺たち2人に注がれている。かといって、それほど大きい声で話していた自覚はないが…他の人からすれば、普段叫んでいる俺たちの普通の声は、大きい声なのだろう。

気まずい空気の中固まっていると、だんだんと周りの人はラーメンに意識を向けていく。2人して安堵の息をつき、2人して同時に喋った。


「「早く食うか。」」


びよびよに伸びきってしまったラーメンは、酷く冷たかった。味も薄くなって、量も多くなって…後々、少しお腹が破裂しそうだったが、美味しいことには変わりなかった。


……………


「───はぁ、とんだ大恥かいちゃったよ…。」


店を出てから、俺の横でげっそりと暗い顔をしたぺいんとは自販機の近くで腰を下ろした。まぁ、確かに疲れた。静かな言い合いを2人で繰り返し、大恥をかき、ラーメンを一気食い…。流石に吐きそうだ。

ラーメン店から放たれる暖色の光とは相まって、すっかり日が沈んでしまった今はひどく真っ暗であり、少し遠くはもう見えない。それでも自販機から放たれる白くも少しばかり眩しい光は俺の目を無性に惹きつけた。速いスピードで点滅を繰り返すボタンに、俺は目をつけてしまう。


(───わかってほしいのに、わかってほしくない。)


ひどく矛盾した考えを持っている俺は、痛々しく、醜く、気持ちが悪い。それも、反吐が出そうな程に。


「…もう帰る時間だし、送ってやるよ。」


この場から逃げたいがために、俺はそう言葉を吐いた。吐いてしまった。決して、日常組の3人が嫌いなわけではない。ないけれど……

時々、思ってしまう。


───俺って、ここにいるに値する?って。

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