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鈴の音
「うめぇぇぇええっ!!」
空がオレンジ色に染まる頃、駄菓子屋では
大袈裟な雨の感想が耳元に響いた。
たったうまい棒一本なのだが、彼はそれに感動しているようだ。まるで、乞食が飯を貰った時の様に。
「……大袈裟過ぎやしないか?」
「旨い物は旨いんだよ!」
それは分かる。だが、その反応はどうかと思う。お前、親に飯貰ってるか?
「……親……面倒見てくれてるのか?」
「…………ああ、見てくれてる……?」
さっきの間はなんだ。そして何故疑問形なんだ。
「まぁ、良い……雨、またな」
「おう!またな!」
……ちょっと不味い。少し暗くなってきた。お母さんに怒られるかもしれない。僕は急ぎ足で歩道を歩いた。すると、
チリン
……鈴の様な音がやけに鮮明に聞こえる。
足音よりも遥かに大きく聞こえた。
僕は振り返ったが、そこには誰もいない。
……気のせいだろう。
僕はそう決めつけ、再び歩き始めた。
チリン
……どうやら、気のせいではないらしい。
けれど、やはり誰もいない。
急に怖くなった僕は駆け足で鈴の音から遠ざかった。
だが、それに合わせて鈴の音も近づいてくる。
チリン……チリン……チリンチリン
……待って……この路地の先は……行き止まりだったはず……。
案の定、行き止まりで僕は完全に袋の鼠となった。背に鈴の音が近づいてくる。
チリン……チリン……チリン……
僕の恐怖を煽るかの様に鈴の音が速く、大きくなっていく。恐怖のあまり僕は叫び声すら挙げられなかった。
チリン
そして、音が止まる。
次の瞬間、そこにいたのはー