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夜道を歩く二人。
街灯に照らされた阿部ちゃんの横顔を見ながら、俺は胸の奥で小さくため息をついた。
――わかってる。
阿部ちゃんが自分に抱いてる気持ち。
あの視線の温度も、言葉の間に滲む想いも、全部気づいてしまっている。
けど、それを口に出したら終わってしまう。
仲間でいる今の関係すら壊れてしまう。
だから、知らないふりをする。
明るく笑って、ふざけて、いつも通り「佐久間大介」でいる。
阿部ちゃんが安心するように。阿部ちゃんが苦しくならないように。
そして阿部ちゃんもまた、決して言わない。
ただ隣にいてくれることだけで満足だと、自分に言い聞かせている。
「……寒くなってきたね」
阿部ちゃんが小さく呟く。
「だなー!あったかいもん食べに行こうぜ!」
佐久間はわざと軽く返す。
二人の声が夜の道に溶けていく。
言葉にならなかった想いも一緒に、静かに溶けて消えていった。
――お互い知っていて、それでも言わない。
そうして守られた絆は、恋よりもずっと痛くて、ずっと強かった。
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