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突然の出来事に頭が追いつかない私はただ唖然とするしか無かった。
(待って、なんで私押し倒されてるの!? 私なんかした!?)
私が混乱している間も、アルベドは私を見下ろして何も言わない。金色の瞳が私をじっととらえて話さないだけ。
そうして、彼は無言のまま、片手で私の両腕を頭の上で拘束したかと思うと、もう片方の手で私の顎を掴み顔を近づけてきた。
「え、え、何、えっ! どう、どうして!?」
「お前こそ、夜中に男をベッドに引き入れてどういうつもりだよ? それとも、こういうのを望んでたのか?」
と、アルベドは私の首筋に唇を寄せると強く吸い付いた。
「痛っ……!」
思わず声が出てしまい、私は彼に抗議の声をあげる。
見え無いし分からないけれど、何となく痕がいってそうなほど痛かった。だけど、そんな私を無視して、彼は私の服に手をかけようとする。
それが、恐ろしくて、たまらなくて、私は目をギュッと瞑ってその勢いのまま彼に頭突きをかました。
すると、アルベドはぐはっとこれまた痛そうな声を上げて後ろへのけぞる。その隙を逃さず私はキングサイズのベッドの端までいき、身を小さくする。
「痛ぇな、何すんだよ!」
「何って、こっちの台詞よ! いきなり、その……変態ッ!」
私は、そう言い放つと布団を手繰り寄せアルベドの視界から逃れるように潜った。
(もうやだ、この人、怖い。絶対変なことされる。)
そうして、暫く私は身動きが取れずにいると、アルベドは俺のせいじゃないしと呟いてから、私に頭を下げた。たらりとほどいていた紅蓮の髪が垂れ、これまた妖美な姿になっているなあと見惚れていると彼の金色の瞳と目が合ったことで我に返る。
「悪かったよ。ちょっとからかっただけなのに……そんな、怒るこたぁねえだろ」
「怒るわよ! 私は、アンタに寝て欲しくてベッドなら寝れるのかなとか色々考えて考えた結果引き上げたのに!アンタは……ッ!」
「でもよぉ、夜に男女が同じベッドっていうのはそういうことなんじゃねえの? てっきり、誘ってんのかと思って」
「さ、さそ……ッ!? なわけないでしょ! 頭の中ピンクなの!?」
私がそう言うと彼はあーはいはいと適当に返事をすると耳が痛いとでもいうように、両手で耳を塞ぐ。
その態度が気にくわなくて、もう一発かましてやろうかと思ったがその前に彼はぽつりと小さいようで大きい爆弾を投下した。
「けど、俺はお前見たいな貧弱な身体には興奮できねぇ」
「は……? はあい!?」
私は、叫ぶと同時に無意識に彼の頬をひっぱたいていたようで気づいたときには右手が彼の左頬に直撃していた。
そして、アルベドはそのまま倒れ込みベッドから転げ落ちる。
その姿を見た私はハッとして慌てて彼の元へ駆け寄る。
まさか、やり過ぎた!? 私は、急いで彼を抱き起こそうとするとその手を掴まれてしまい、私はひぃいっとどこから出したのか自分でも分からない悲鳴が漏れる。
「お前、ほんとすぐ暴力に走るよな……痛ぇよ」
「は、はは……まあ、その様子なら大丈夫そうで」
「大丈夫にみえんのか?」
「うん」
私は、即答する。
私の回答に対し、不満ありありといった様子でアルベドはベッドの下から私を見上げていたけど、ふと彼の好感度を見ると32に上がっており、殴られたことによって上がったのかと一瞬焦り、アルベド、ドM説が私の中で浮上したがさすがに彼に限ってそうはないだろうと自分の考えをすぐさま否定する。
けれど、叩いてしまったことは申し訳なくて私はごめんなさい。と一応一言彼に告げた。
でも、あれは酷かったと思う。
貧弱な身体だとか、それも私の胸を見て言った。確かに、エトワールは胸がない方だしヒロインに比べればそりゃ幾らか背も低ければ可愛くない(そもそもエトワールは美人より)為、分からないことでもないが、それでも失礼極まりないと思う。
女性の身体のことは言っちゃいけないって教わらなかったのだろうか。
「た、確かに胸はないけど! そこで魅力が決まるわけじゃないでしょ!」
「いや、でも大きい事にこしたことねえだろ」
と、アルベドは片手でさわさわと揉むようなジェスチャーをして私を見上げる。
あまりにも下品というかなんというか、私はもう一発ぶん殴ってやりたい気持ちを抑えながら彼を睨んだ。
すると、それを察してか彼は冗談だよと苦笑いを浮かべて立ち上がり埃を払う。
本当にこの男が攻略キャラであるのかと疑いたくなるほどに、何というか私の扱いが雑というか、萌える要素がないというか。
「悪ぃ、お前見てるとついからかいたくなっちまうんだよ」
「……最低」
「へいへい」
アルベドは反省の色を全く見せず、ただひたすら謝っているだけ。
それがなんだか腹立たしくて、私はもう面倒くさいからこのまま寝てしまおうと横になると、ギシィと音を立ててアルベドが再びベッドの上に戻ってきた。
まだ、何かする気なのかと枕を手に取り戦闘態勢に入るとアルベドは何してんだと笑い、ベッドの上であぐらをかく。どうやら、もう何かするといった様子は伺えず、私を見てフッと微笑んでいた。
「お前の言葉に甘えてベッドで寝ようと思ってな。ああ、もう別に何かするって訳じゃねえ。さっきも言ったろ?からかっただけだって」
「それが行きすぎてるっていってるの」
「冗談も分からねえの?」
「……」
私が無言でいると、それすらも面白いのかククッと喉を鳴らし笑う。
本当にムカつく男である。
そんな彼の言葉を無視して私は目を閉じる。相手にするだけ無駄だと思ったからだ。しかし、彼はあろう事か横になっている私を後ろから抱きしめてきたのだ。
「ちょ、ちょ! 何もしないっていったじゃん!」
「ああ、何もしてねぇよ。良い抱き枕だと思って」
「だ、抱き枕って……」
「何だよ。お前こそ、何かされるんじゃないかって期待してんじゃねえの?」
誰が、何を。と私は言ったが、これ以上彼のペースに飲まれていては拉致があかないと思い私は口を閉じた。
そんな私のことをさらにギュッと包み込むようにして抱きしめるアルベド。耳にかかる息や首筋に刺さる髪の毛など、全てがくすぐったくて私は身を捩るが、彼は逃さないと言わんばかりに腕の力を強めた。
それに、少しドキッとした自分がいて……
こんなにも優しくされると、勘違いしてしまうじゃないか。
(勘違いって何!? 別に此奴のこと好きでもないし、今すぐにでもこの腕の中から逃れたいんですけど!?)
それでも、もう抵抗するのも面倒くさいからと私は再び目を閉じることにした。寝てしまえば何も問題ないと思ったからだ。 誰が、何を。と私は言ったが、これ以上彼のペースに飲まれていては拉致があかないと思い私は口を閉じた。
そんな私のことをさらにギュッと包み込むようにして抱きしめるアルベド。耳にかかる息や首筋に刺さる髪の毛など、全てがくすぐったくて私は身を捩るが、彼は逃さないと言わんばかりに腕の力を強めた。
「…………寝れない」
「俺は寝るけどな。あ~良い抱き枕があってよく眠れそうだなあ」
「……ッチ」
「おい、エトワール。今舌打ちしただろ」
「してないわよ。分かったわよ。寝れば良いんでしょ、寝ればッ!」
そう言って、私は半ば自棄になり目を閉じようとした。
だけど、すぐには熱は冷めず後ろで寝息を立てて寝ているアルベドを恨めしく思いつつ私はため息をつきもう一度目を閉じる。
誰かとこうして寝たことがなかったなとか……本当はリースも……遥輝もこうやって一緒に寝たかったんじゃないかと思ってしまってまたいたたまれない気持ちになる。
何で、如何して彼の顔が浮かんだのか分からなかったけど、私はそんなことを考えている内に眠りについていた。
「……遥輝」
「…………誰だよ遥輝って」
私が眠りについた後、本当は狸寝入りをしていたアルベドは目を開きぼそりと呟いていた。
彼の好感度は知らぬ所でチカチカと輝き、まるで心の揺れを表しているかのように光った後何事もなかったように32という数字を刻んでいた。
「やっぱ、好きな男いんのか……此奴」
考えても仕方がないと言った風に、アルベドは腕の中で寝ている小さな聖女をギュッと抱きしめ目を閉じた。