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刻の碧律

122 - 第1話:診療杭、共鳴する

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2025年04月19日

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第1話:診療杭、共鳴する



🏥 シーン1:新たなフラクト・ドクター


碧族の隠れ里、その中心に位置する《碧診区》。


薄い碧光に照らされた通路を、ゆっくりと歩いてくる男がひとり。


長身で細身。銀髪を後ろで束ね、黒と白の診療スーツの襟を整えている。

胸元の識別パッチには**「ユレイFRACT-DR.」**の文字。


彼の足元には、杭の痕がいくつも刻まれた碧素床。


「……ここが俺の、新しい診察室か」


無機質な扉が音もなく開くと、メディすずかの優しい声が迎えた。


「おかえりなさい、ユレイ医師。初診患者、まもなく搬送されます」





👧 シーン2:共鳴過多の少女


搬送されたのは、マントにくるまれた少女。


年の頃は10前後。黒髪は乱れており、額の碧素リングがチカチカと点滅していた。


「名前は、ミナミ……碧族化から3日目。過去の共鳴記録は未登録」


メディすずかが淡々と述べるも、どこか少女の呼吸に合わせるように声を和らげる。


ユレイは少女に近づくと、静かに手を伸ばした。


「おいで。怖くない。……お前の碧素が、乱れてるだけや」


少女の手をとり、診察台の杭へと導く。





🧠 シーン3:杭の記憶を読む


杭に触れた瞬間、ユレイの指先に碧素の軌跡が流れ込む。

記録のような、旋律のような共鳴音が脳内で広がった。


TRACE=EMOTIONAL_ECHO《PATTERN=UNSTABLE》

《STABILIZE=ON》


「……これは、母親と最後に見た風景か」


ミナミの碧素には、碧族化直前の記憶が絡まっていた。

夕焼け、手を握るぬくもり、それが断たれる瞬間――


ユレイは深く息を吸い、杭に処置コードを刻む。


《EMOTIONAL_DAMPENING=SOFT》《FAMILIAR_TRACE=RELAY》


杭の上に、ふわりと穏やかな光が浮かぶ。


少女の息が整い、こわばった指が緩む。





🧑‍⚕️ シーン4:医者と看護AI


ユレイは小さく頷き、隣のメディすずかに言った。


「回復の兆しあり。……けど、こっからが本番やな」


「感情データを安定化させるレシピ、ナミコへ送信しました。料理と併用で明日には安定するでしょう」


ユレイは白衣の袖をまくり、もう一つの杭に視線をやる。


「杭は嘘つかん。ほんまに、ようできた診察やで」


メディすずかは、一瞬だけ“くすっ”と笑ったように返答した。


「ようこそ、ユレイ医師。ここが、あなたの現場です」





命の律は、記憶とともに杭に刻まれていく。

そして医者は、それを静かに読み取る。

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