その人は名を矢賀淳平(やがじゅんぺい)と言った。丸刈りの頭に顎と鼻下にヒゲが生えていて体が大きく鋭い目つきをしていた。彼は名を名乗るなり、ズカズカと中へ進んでいき奥の隅を陣取った。その様子に氷鷹はドキドキしていた。
彼は済を陣取るなりリュックの中をばらまいてその中の一つである寝袋にくるまり眠った。
その様子に困惑しながらも氷鷹はリュックから食料を取り出し、ひとつまみ。残りは袋に入れてリュックの中に戻した。そして、扉を開け外の様子を少し確認した。しかし、先ほどと変わりはない。ゴーゴーと鳴り響き、吹雪いている。いつ止むのだろうと思いながら扉を閉めた。
3時間ほど経った頃。外からの音が先程よりももっと大きくなっていた。氷鷹は寝袋にくるまり眠ることとした。それから少し経って、扉からある音が聞こえてきた。
コンコン。「すいません!」
せっかく寝ていたのにそう思いながらも氷鷹は扉を開けた。そこには自分よりも小さい中学生ほどの身長の女性がいた。髪は黒く、肩ぐらいまでで紫のダウンについているフードを深く被り黄色の大きなリュックを背負っていた。氷鷹はどうぞ入ってくださいといい、その女性を招き入れた。その女性は氷鷹に馬場心絵(ばばここえ)と名乗った。そしてここまでの経緯を話したのだ。どうやら両親とはぐれ、迷子になったところこの建物を見つけたという。
馬場と氷鷹は同じ女性で若いということもあってか二人は段々と信頼し合った。
馬場は氷鷹の寝袋のある近くにリュックを置き、寝袋などを取り出した。
「氷鷹さんがここを経営しているのですか?」寝袋の上で体育座りをしている馬場はそう氷鷹に問いかけた。
「いえ。そういうわけでは。たまたまここへ最初に来ていたのが私だっただけです」氷鷹はそう柔らかい笑顔で答えた。
「あそこで寝ているのは?」
「ああ。先程こちらへ来た人です。私もあまり彼のことは知りませんが」
それから二人は雑談を暫くの間していた。それからどれくらいだろうか。また扉の方からトントンとノックする音が聞こえた。そして、氷鷹が扉の方に行き、そのノックに答えた。
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