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コメント
1件
えええ、冷美さん容赦なさすぎる!!😭💦 AI使った企画書見抜くところとか、涼二のSNS全部把握してるってところが恐ろしすぎて鳥肌立ったよ…👻 最後の「天国から地獄へ堕ちる瞬間を特等席で見届ける」って冷美さんの言葉、ゾクゾクするほどカッコよかった!!✨ でも涼二に同情しちゃう部分もあって複雑な気持ち…次の展開が気になりすぎるよ〜!!🥺💕
あれから2週間が経った。企画書だけでも書いて寄こせと冷美に扮して言ったところ、昼の仕事を辞めた涼二は、家でずっと企画書を練っていて、夜になったら脚本家バーに行って、終電で帰って来るのを繰り返した。
秋也にすっかりご執心のようで。なによりだわ。
企画書は、誰にも見せずに自分だけのオリジナルで、面白いものにして持ってこいと言ってあるが、そんなものを涼二が作り切れるわけがない。あなたのオープンチャットのIDも、インフォトグラムのアカウント、SNSのアカウント、私は全て網羅しているからね。IDだけじゃなくて、パスワードも知っているの。だから、どんな風にAIに相談しているのか、ぜんぶ知っているのよ?
例えばこれ。
涼二の相談内容:男が男の友人を好きになる話で、一夜の過ちから、友人を好きだと意識するような話をまとめた企画書を作って
相談内容もつまらなさすぎて、鼻で笑ってしまった。AIの回答は以下のもの。
AIチャットの回答:「ただの親友」という安全圏からの転落。長年の信頼関係があるからこそ、一線を越えた後の「拒絶への恐怖」と「執着」が激しく火花を散らす、心理描写重視のBLドラマ。
秋也と涼二は長年の信頼関係なんて無いし、「拒絶への恐怖」と「執着」が激しく火花を散らす、心理描写重視のBLドラマなんて、土台無理な話よ。
彼は薄っぺらな心理描写しか書けないし、多分売れる企画に仕上げるのは不可能。
まあ、ここからどんな風に企画を仕上げるか、企画書シートもログインして見れちゃうから、的確に破壊してあげるね。
他の企画も見事に面白くない。よくもまあここまで面白くない企画書作れるわね。逆の才能あるんじゃないかしら。
企画書ができた頃合いを見計らって、涼二に電話をかけた。私は今、天魔と一緒にいる。仕事終わりに一直線にエンビルへやってきた。
涼二は自宅だから、ここなら安全に話ができる。
「藤崎君、企画書見たわよ」
『はい、頑張ってアイディア捻り出しました!』
「残念ね」
『えっ、どういうことですか? 残念ってなにが……』
「あなた、AI使って企画書作ったでしょ」
『……』
涼二はすぐに否定しなかった。
『や、やだなあ冷美さん、そんなわけないじゃないですか……』
「わかるの。毎日企画書たくさん見ているから。あなたが作った企画書、面白くない上にAI使っているって、どういう神経しているの? 2週間待ってこれ? 話にならないわ!」
『ま、待ってくださいっ』
「私はもうあなたのこと、何週間も待ったけど? なにこの薄っぺらな企画! これ、お金払う課金対象者のリサーチできてる? 市場調査はしたの?」
涼二は黙ってしまった。
「AIなんかに頼ってチープな企画書作る暇あったら、自分で頭を使いなさい! 未だかつてこんなにチープな企画書、見たこと無いわ。ログラインも薄いし、3幕構成も弱すぎる。第1幕が崩壊で、次が自覚と葛藤、最後は再燃? なにがどう再燃するの? 彼らの物語は、いったい誰が、どんなふうに感動するのか、今すぐ説明して!」
彼は答えない。画面を見ると震えている。今は自宅の監視カメラから涼二の様子を撮影していた。目に涙を溜めている。ちょっと言われただけでこれだもん。打たれ弱すぎる。
「そんな説明もできない薄っぺらな企画しか作れないなら、才能ゼロどころかマイナスだし、もう時間の無駄だから私に一切連絡してこないで! 秋也の頼みだから大目に見ていたけど、あまりに酷すぎるわ!!」
ぶちっと電話を切って、そのまま電源をオフにした。
あー、すっきり☆
「お疲れ様」
絶妙なタイミングで、レディースグラスに注がれた生ビールが出てきた。泡もクリーミーで美しい。
「ありがとう」
笑顔で受け取って一気に飲み干した。ああ、ビールがおいしいわ。
「随分辛辣だな、冷美さんは」
「沙耶では言えなかったことや、悔しかったことをそのままぶつけただけよ。私も今回のことで、我慢しすぎるのはよくないってわかった」
「我慢なんかする必要ない。言いたいことがあれば、ちゃんと腹割って話せばいいんだ」
「そうね。でも当分、パートナーは要らない。おひとりさまでいいわ。天魔と慰謝料山分けしたら、ここへ毎日飲みに来るつもりだから」
「営業貢献してもらえたら助かるよ」
「慰謝料全額つぎ込んで貢献しようかしら」
「いいね。大歓迎」
談笑している時だった。天魔のスマートフォンが音を立てて鳴った。
「来たな」
「慰めて欲しいんでしょ」
「いよいよ大詰めだな。今夜、堕とすぞ」
天魔が顔を引き締めた。私も頷く。
彼がスマートフォンをタップした。「もしもし、涼二? どうしたの?」
『秋也……ごめ……』
「どうしたの、涼二! 泣いているの?」
『せっかくチャンス……作ってくれたのに……僕、だめに……しちゃってさ……』
嗚咽が漏れる。モニターを見ると涼二がボロボロの様子で泣いている。
可哀相とかそういう感情は一切わかず、ざまあみろ、と思った。
「バーにおいでよ。話聞くから」
『うん……』
「今日は貸し切りにするから。涼二のために」
『でも、そんなの悪いよ……』
「大事な涼二が困っているんだ。ボクにできることはなんでもするよ。さ、おいでよ。待ってるから。奥さんは大丈夫?」
大丈夫もなにも、ここでやり取り聞いてますが。思わず笑いそうになってしまう。
『仕事でまだ帰ってない』
「じゃあ、決まりだね。打ち合わせが入ったって言って、出てきたらいいよ。今日は朝までいよう。ずっと一緒にいたい」
『……僕も』
「うん。待ってるよ」
電話が切られた。
「沙耶。段取りはわかっているよな? バーで旦那を慰めて、頃合い見計らってホテルへ行く。場所はここだ。見つからないように待機しておいてくれ」
天魔がスマートフォンを差し出した。
そこに映っていたのは、フォレストスカイ東京――1泊で20万円はくだらない、超高級ホテルだった。
「俺たちが入って、最高級の演出をするから、しっかり撮影してくれ。話は通しておく。友人がサプライズで遊びに来るとクルーには伝えておくから」
ここが、涼二の墓場。安っぽいラブホテルじゃなくて、よかったわね。
天国から地獄へ堕ちる瞬間を、最高の特等席で見届けさせてもらうわ――