💙side
めめからのまっすぐなアプローチに、俺の心は揺れた。
涼太を失って生まれた心の隙間に、新しくめめが入り込もうとしている。
お人好しの優しさなんかじゃなく、愛情を持って俺のことを好きでいてくれていることは、鈍感な俺にもなんとなくわかってきた。
それでももう一度、頭から誰かを信じてしまうのは怖かった。
その後の音楽番組の収録の日のこと。
収録を済ませたばかりの楽屋でいきなり阿部が倒れた。
💛「阿部、大丈夫か?」
近くにいた照が駆け寄ろうとしたのを制し、涼太が阿部を抱き起こした。
❤️「無理しすぎ。だから言ったのに」
💚「ごめん、涼太…」
涼太に抱きかかえられるようにして、阿部は青い顔をしたまま、ふらふらと立ち上がる。
後から聞いた話によると、阿部はもともと頑張っていた資格試験の勉強に加え、新しく始まった番組パーソナリティーの準備、おまけに拘束時間が長いクイズ番組のロケが数日間続き、寝不足と疲労が溜まっていたのだそうだ。
❤️「みんな、心配かけてごめん。阿部は俺が見るから帰っていいよ」
そう言うと涼太は、阿部を楽屋のソファに優しく寝せ、心配そうに頭を撫でた。
阿部は目を閉じたまま、涼太に介抱され、安心しきっているように見えた。
そんな二人の仲睦まじい姿が、幸せだった頃の俺と涼太に突然重なって、俺はその場から逃げ出した。
ここまでの苦労が水の泡だ。
決して誰にも気づかれずにいたかった。
苦しい胸の痛みを無責任に想像されたくもなかった。
いきなり出て行った俺に、涼太は気づいただろうか。
まだ自分を好きなのかと呆れるだろうか。
それとも俺をやはり忘れられなくて、再び俺を選んでくれるだろうか。
自分の中の、涼太の面影をどうしても消したくて、俺は追いかけてきためめに、しがみつくように抱きついた。
💙「めめっ、めめっ、お願い。涼太を忘れさせて…っ!」
めめは、俺抱きしめると、背中を優しくさすってくれた。
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