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私が山崎さんを介して警察に届けた「利息」──
それは、莉奈が提出した音声データの「完全版」だった。
彼女が自分に都合の悪い部分をカットして提出したその裏で
私は彼女自身が恐喝を主導し、得た金を海外のカジノで使い果たしていた証拠を突きつけたのだ。
結果、莉奈の「捜査協力」による減刑の目論見は崩れ去り、彼女にも執行猶予なしの実刑判決が下った。
刑務所への移送直前、莉奈から私に一本の電話が入った。
接見室の受話器越しに、彼女は狂ったように笑いながら言った。
「……詩織、あんたは勝ったつもりでしょうね。でも、あんたの人生、最初から直樹に『計算』されてたのよ」
「負け惜しみなら、檻の中で一円の価値もない壁に向かって言いなさい」
「ふふ、冷たいわね。……ねえ、あんた、どうして自分の父親が、あんなにあっさりと直樹を信頼して、会社の中枢にまで入れたか考えたことある?」
「……あんたの父親と、直樹の母親…あのボロボロの義母にはね、一円じゃ済まない『貸し借り』があったのよ」
私の心臓が、嫌な音を立てた。
「直樹はね、あんたの父親の『隠し子』の、腹違いの兄弟なのよ。……あんたの父親が昔、愛人に産ませた子供を捨てた。その愛人が再婚して産んだのが、直樹」
「直樹は、自分を捨てた『父親代わり』の男への復讐のために、あんたの家に近づいたの。…あんたが愛した夫は、最初からあんたを『復讐の道具』としてしか見てなかったのよ!」
受話器を握る手が、微かに震える。
父の誠実さを信じていた私にとって、それは直樹のどんな裏切りよりも残酷な「負債」だった。
「……信じないわ。そんなデタラメ」
「信じなきゃいいじゃない。でも、直樹が持っていたあの『万年筆』。……あれ、あんたの父親が直樹の母親に贈ったものなのよ」
「あんたが大切に持っているその『形見』が、本当は誰のためのものか、じっくり計算してみたら?」
電話が切れ、ツーツーという無機質な音が響く。
私は手元にある、父の形見だと思っていた万年筆を見つめた。
もし莉奈の言葉が本当なら
この万年筆は父の誠実さの象徴ではなく、父の「過ち」の証拠だということになる。
直樹は、私の家族を壊すことで、自分の中の「欠損」を埋めようとしたとでも言うのか。
一切の狂いもない計算で、私を「仇の娘」として愛し、壊したというのか。
真実がどうあれ、私は止まらない。
もし父に過ちがあったとしても
それを理由に私の人生を奪っていい道理など、何処にも存在しないのだから。
【残り34日】
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