テラーノベル
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少しの沈黙の後、イシダさんが口を開く。
「―どのようにして自分がロボットだと気づいたんだ?―」
「寝ようとした時に。バグなんでしょうね。気づいた途端今まで見えてなかったものが見え始めました。充電ケーブルにキッチンに置かれた大量の燃料、そして金属でできた自分の体。記憶なんてあるわけないですよね。僕が最初に起動したのがこのシェルターなのだから。」
「―君は自分が人だと感じるようにカズヤにプログラムされていたのだろう。だから都合の悪いものは見えなくなっていた。俺から君に真実を伝えてもよかった。でもそれじゃあ君が不憫だと思ってね。もし自壊でもされたらって。だから君が自分から気づけるようにロボットの話をしたりしてたんだよ。―」
やっぱり最初から僕がロボットだと気づいてたんだな。
「イシダさんと通信をしなければ気付けなかっだ気がします。正直ショックでした。自分が人によって作られたものだったなんて。そして作った人がイシダさんの息子だった。」
「―あぁ、理由はなんであれ、騙していてすまなかった。―」
謝る必要なんてない。僕はイシダさんに感謝している。
「別に恨んでなんかいませんよ。カズヤさんから僕に対する使命も分かりましたから。」
「―出るんだな。シェルターを。―」
「はい。僕に課された使命は、内蔵されたデータ、カズヤさんからイシダさんに渡したいデータをイシダさんのシェルターまで届けにいくこと。なのでイシダさんのシェルターの座標を教えていただけますか。」
「―北緯35度、東経139度だ。こちらにこれるか?―」
「はい。そちらに向かいます。少し時間がかかると思いますが、急いで向かいますよ。」
「―正直なところ早くきて欲しいが。急がなくてもいいよ。外は危険だ。無理をして何かあって死なれたりしたら。―」
「”壊れたり”でしょう?僕はロボットなんですから。」
「―いや、君は限りなく人間だよ。俺は君に死んで欲しくない。―」
「ありがとうございます。嬉しいです。なら出来るだけ急ぎめで。」
「―あぁ、よろしく頼むよ。気をつけてな。―」
「はい。今度はテレビ越しではなく実際に会ってお話ししましょうね。」
こうして僕とイシダさんの最後の通信が終わった。
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