テラーノベル
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ツアー先のホテル。同室になった二人の部屋には、静かな空気が流れていた。
普段なら筋トレをしたり、動画のチェックをしたりする岩本照が、今日は珍しくベッドに腰掛けたまま、ぼんやりとスマホを眺めている。
「……照」
風呂上がりの渡辺翔太が、タオルで髪を拭きながら声をかけた。
「ん?」
「お前、顔死んでるぞ」
「……そうか?」
「おう。眉間のシワ、いつもの倍」
渡辺は冷蔵庫から水を取り出すと、岩本の隣にドサッと座った。
そして、驚くべき行動に出る。
自分の方を向いた岩本の肩を強引に引き寄せ、そのまま自分の膝の上に岩本の頭を乗せたのだ。
「うおっ!? ……え、翔太?」
突然の膝枕。しかも、あの「触られるのが嫌い」な渡辺翔太からの。
岩本が目を丸くして硬直する。
「動くな。……お前、最近根詰めすぎなんだよ。リーダーだか何だか知らねーけど、背負い込みすぎ」
「いや、でも……」
「うるせぇ。……たまには俺に甘えとけ」
渡辺の声はぶっきらぼうだが、岩本のこめかみをマッサージする指先は、驚くほど優しい。
美容男子ならではの、ツボを心得た絶妙な力加減。
「……翔太の手、なんかいい匂いする」
「ハンドクリーム塗ったばっかだからな」
「……ん、そこ気持ちいい……」
岩本の身体から、ふっと力が抜けていく。
視界にあるのは、少し照れくさそうに、でも真剣な顔で自分を見下ろす渡辺の顔。
いつもは「俺の面倒を見ろ」と言わんばかりの翔太が、今は「兄」の顔をして自分を守ろうとしている。
「……なぁ、翔太」
「あ?」
「お前、本当は頼りになるよな」
「は? 今さらかよ」
「ふふ、ごめん」
岩本が膝の上で小さく笑うと、渡辺は「っせぇな……」と呟き、空いている手で岩本の目をそっと覆った。
「笑ってねーで寝ろ。……お前が復活しねーと、俺らが困るんだよ」
「……ん」
「あと……いつもサンキュな」
視界を遮られた暗闇の中で、渡辺の素直な感謝の言葉が降ってくる。
岩本はその言葉と、温かい体温に包まれて、強烈な安心感を覚えた。
「……翔太」
「ん」
「……好きだよ」
「……知ってる」
短く返された言葉には、拒絶ではなく、深い愛情が滲んでいた。
最強のリーダーが唯一、弱音を吐いて子供に戻れる場所。
それは意外にも、一番手のかかるはずの「彼」の膝の上だった。
コメント
1件
やるやんしょっぴー たまに出るしょっぴーのお兄ちゃん感がたまらなく好み 続き待ってます