《神話を超える双星の勇者》
第5話:「友情の証」
 
 ルミナスの神殿を目指し、歩みを進めるカイ、リナ、セリア、そして新たな仲間となったレオン。
彼らの旅は順調に進んでいるかのように思えた。だが、その道のりには新たな試練が待ち受けていた。
 
 ■ 不穏な村と新たな問題
 旅の途中、彼らは小さな村に立ち寄った。だが、村の様子はどこかおかしい。人々は怯えた表情で、彼らを見るとすぐに扉を閉めてしまう。
 「何かがおかしい…」
カイは周囲を警戒するように見回した。
 村の長老に話を聞くと、衝撃的な事実が語られた。
 「最近、村の近くに突如として現れた『黒い影』が、人々を襲っておるのじゃ。誰もその正体を知らない。ただ、夜になると必ず人が消える…」
 リナは拳を握りしめた。
「また…誰かが苦しんでる。助けないと。」
 レオンは腕を組み、静かに呟く。
「助けるのはいいが、慎重にな。闇の魔物は簡単に倒せる相手じゃない。」
 
 ■ 村人たちの不信感
 だが、村人たちは怯えた表情で口を閉ざしていた。
「外から来た者に、何ができるというのだ…?」
「神の呪いじゃ。抗っても無駄だ…」
 カイは言葉を飲み込んだ。
自分たちの力では、信頼を得ることすら難しい。
 そんな中、リナは村の少女が隠れて泣いているのを見つける。
 「…怖いの?」
優しく声をかけると、少女は怯えた表情で頷いた。
 「お父さんが…昨日の夜、黒い影にさらわれたの…。怖くて…もう、誰にも会えない…」
 リナは少女の肩に手を置き、優しく微笑んだ。
「大丈夫。私たちが助けるから。…絶対に、君の大切な人を取り戻すから。」
 少女はリナの言葉に、わずかに希望の光を宿した。
 
 ■ 仲間の信頼
 夜、四人は村の外れに陣を張った。
 「リナ…無理はするなよ。」
カイが静かに声をかける。
 リナは強く頷く。
「大丈夫だよ、兄さん。…私、もう怖くない。誰かを守れるようになりたい。」
 その言葉にレオンが口を挟む。
「…守ることは簡単じゃない。だが、諦めない覚悟があるなら、それだけで十分だ。」
 リナはレオンを見つめ、微笑む。
「ありがとう、レオンさん。でも、私は…もっと強くなりたいんです。兄さんみたいに、誰かを支えられる存在になりたい。」
 レオンは静かに頷き、焚き火に視線を戻した。
 
 ■ 迫る闇の影
 夜が更け、静寂に包まれた村に、ついに『黒い影』が現れた。
 「来た…!」
カイは剣を構え、闇に向かって走り出す。
 黒い影は無数の手足を持つ不気味な魔物。動きは素早く、獲物を襲うように村人の家へと近づいていく。
 「させない!」
リナは恐怖を抑え、果敢に立ち向かった。
 しかし、リナの剣は魔物の身体を貫くことができない。
 「くっ…!」
その隙に影が少女に向かって襲いかかろうとした。
 「やらせるか!」
レオンが咄嗟に割って入り、雷を纏った剣を振るった。
 魔物は雷光に怯み、動きを止める。
 「リナ、今だ!」
レオンの声に、リナは自分の剣を強く握りしめた。
 
 ■ 努力の力
 「絶対に、守るんだ…!」
 リナは雷光が走った隙を突き、魔物の心臓を狙って剣を突き刺した。
 「お願い…届いて…!」
 その一撃が、見事に魔物の核を貫いた。
 黒い影は悲鳴を上げながら崩れ落ち、消滅していく。
 リナは膝をつきながらも、静かに呟いた。
 「…やった…!」
 
 ■ 友情の証
 戦いが終わり、リナは自分の手を見る。
自分の力で誰かを守れたことに、確かな実感があった。
 「リナ、よくやったな。」
カイが笑顔で駆け寄り、妹の頭を優しく撫でる。
 「お前の努力が、みんなを救ったんだ。」
 リナは涙を浮かべながら微笑んだ。
「…ありがとう、兄さん。」
 レオンも静かに微笑んだ。
「悪くない戦いだったな。…努力は、裏切らない。」
 リナは力強く頷いた。
「うん。…これからも、もっと強くなる。」
 
 ■ 新たな絆
 戦いを終えた翌朝、村人たちは四人に深く感謝を告げた。
 少女はリナに駆け寄り、ぎゅっと抱きしめた。
 「ありがとう…お姉ちゃん。」
 リナはその温もりに、胸が熱くなった。
 「…ううん、大丈夫だよ。これからは、もっと強くなるから。」
 カイはリナの隣で静かに呟く。
 「お前はもう、立派な戦士だ。」
 
 ■ それぞれの想い
 村を後にする四人。旅の先には、さらなる試練が待っている。
 それでも、リナの表情は明るかった。
 「これからも、きっと乗り越えてみせる。」
 カイは微笑み、頷いた。
 「おう。お前なら、絶対にできる。」
 レオンも静かに呟く。
 「お前の努力、ちゃんと見てるからな。」
 
 友情の絆が深まった一夜を超えて、四人の旅は続いていく。
運命の神託に抗うため、そして自らの成長のために。
 
 第5話・完








