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【エピローグ・二年後・淡路島】
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夏の陽射しが淡路の海をキラキラと照らす中、島全体が最高潮に熱気に包まれるお盆休み
毎年この時期になると、氏神様の境内から海岸にかけて、荒波祭り――通称「喧嘩まつり」が、土地を揺るがすほどの喧噪と共に開催される
ワハハハハッ!
「久しいなぁ~~ジンさん!さぁ宴の始まりだぁっ!!」
真っ赤に酔った顔をさらに赤く染め、赤鬼と化した正宗が、神輿の上に乗って高らかに笑っている、そして汗と酒の匂いをぶんまきながら大声で叫んだ
「政宗君!今年もうちの西が勝つっっ!」
ジンも負けじと声を張り上げて、二人は激しくぶつかり合った
五尺褌一丁に地下足袋を履いた、ほぼ裸同然の男達が、重厚な神輿を担いで激しく体当たりしている
三百キロを超える神輿が、担ぎ手の肩で波のようにうねり、ジンが率いる西組の神輿と、正宗が率いる東組の神輿が、境内前の広場で真正面から激突していた
「あの二人はいつもは仲が良いのに、この時ばかりは殺し合う勢いじゃの」
観覧席で団扇をパタパタしながら、松吉の言葉に浴衣姿の桜が笑う
クスクス・・・
「ジンさん用にシップを大量に用意しているわ、明日は足腰が立たなくなるでしょうから」
その時桜の横で「ぴぎゃぁ~!」と赤ん坊の泣き声がした
「こ~れ!ヨンジュン泣くのではありません!お前は山田旅館の大切な跡取り、このババはあなたに期待しているのですよ」
フネの腕の中には生後10カ月の桜とジンの長男「ヨンジュン」がいた、小さな赤ん坊はフネを見てぐずぐず言っている、フネの目が蕩けそうに垂れ下がっている
「ママ・・・生まれたばかりの赤ちゃんに何を言ってるの・・・」
桜が孫をあやす母親にあきれて言う
「まぁまぁそう言っても、女将はヨンジュンが可愛くてしかたがないんじゃ、ヨ~ンジュ~ン♪ひい爺の所においで」
そう言って米吉は笑った、桜は愛しい我が子にメロメロになっている家族をじっとみつめて思い出に浸った、すべてが順調で幸せだった、特にこのヨンジュンの存在が桜のキャリアウーマンだった人生全てを変えた
この子が生まれ、最初の六週間にジンと桜夫婦には赤ん坊を中心にいろんな習慣が出来き、そのあともそれはずっと続くことになった、そのうちの常にヨンジュンが心の中にいることは死ぬまで続くことだろうと思った
二人はヨンジュンをメロメロに愛していた、とにかく可愛くてたまらなかった、シミ一つないすべすべの肌、天使のような可愛い巻き毛、そして瞳は大きくて切れ長の一重だ、誰がどう見てもジンの子供だった
二人はヨンジュンが物を投げると将来野球選手になると騒ぎ、ベビーバスの中でバシャバシャ水しぶきを上げると、水泳選手で日本代表でオリンピックに出るだろうと言った
特にジンは彼が将来なりたいものは、なんでも成らせてやる!と息巻いた
桜は自分をどこまでも目で追うヨンジュンが愛しくて溶けてしまいそうだった、彼の瞳はキラキラしてしゃべれないだけで、心の中はいろんな思いが詰まっているのが想像できた
ジンは育休をとって一緒に子育てに専念してくれた、新生児の時の沐浴はジンの役目だった、ヨンジュンは水が大好きで、入浴が終わればまだ遊びたいのか服を着せられるのが気に入らないのかよく泣いた
その度ジンは汗びっしょりになって、ちっちゃなヒトデのような手を摑まえて、そっと袖口に通そうと毎回格闘する
そんな父親の気持ちも知らないで袖口の中で手をパーにするヨンジュンの指先がひっかかって、なかなか産着が着せられない
「くそっ!ヨンジュン!たのむから「グー」にしてくれ!茹でたスパゲティをストローに通している気分だ」
とジンが言った
クスクス
「そのたとえ最高!」
桜が笑う、なんとか片手を手に通すと、ヨンジュンは不安そうにむずがった、ジンがもう一方の手にとりかかると、さっき通した方の手がすっぽり袖から抜けてしまった、今までの30分がまったくの無駄になって二人は脱力した、そして爆笑し、また一からやり直した
ジンは海外から取り寄せた最高級ブランドのチャイルドシートをヨンジュンのために購入した、しかし、彼はガンとしてそれを拒絶し、車に乗せている間、暴れまわって泣いたし、最高級ベビーカーにも乗らなかった
「きっと拘束されるのが嫌なんだよ、見ろよこのシートベルト、F-15戦闘機、顔負けだぞ」
「でも五点支持式のシートベルトで、赤ちゃんには一番安全って書いてあったわ」
「チャイルドシートがない時代はどうしてたんだい?」
「抱っこしてたんじゃないかしら?」
「これじゃいつまでたっても出かけられないよ」
「・・・・・」
「・・・・・」
―五分後―
「ジンさん!絶対安全運転でね!事故ったらだめよ!」
「まかせろ!」
後部座席でヨンジュンをおくるみに入れて桜が抱っこしている、彼女はたとえ今、この瞬間交通事故にあってもこの子だけは身を挺して守ると誓った
桜の腕の中でヨンジュンはスヤスヤと気持ち良く眠っていた、ジンはこれほど緊張して運転したのも初めてだと後から思った
ジンはとても良い父親で、模範生のような夫だった、しかしそんな夫でも外に出て働いてもらわないといけない、しかも彼はCEOだ、ずっとリモートで家で仕事をしてくれてたのが、来週から彼はいつも通り会社に出勤し、いよいよ日中は桜とヨンジュン二人きりになった
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コメント
3件
ヨンジュン😊素敵な名前✨️ み〜んなに愛されて幸せだね🥰フネさん🤭👍 スクスク大きくなぁれ💕 ジンさん桜ちゃんが幸せで本当にうれしいよ〜😭
わぁ♡2人にベビーちゃんが (*´˘`*)♥ ヨンジュン君にみーんなメロメロですね💕(∩´∀`∩)💕 みんなに幸せが訪れて良かった✨️
ヨンジュン君👶🏻いらっしゃい🩷祖父母も溺愛、ジンさんと桜ちゃんの子だもの愛情たっぷり、将来が楽しみですねー