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月夜に姫は

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月夜に姫は

11 - 第11話

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2024年12月14日

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羽衣は、突如光を放った。


余りの目映さに、中将含め、場にいる者達は目を瞬く。


が……。


皆の記憶は、そこで途切れてしまった。


「……さようか」


御簾の向こう側から、静かな声が流れて来た。


宮中に戻った中将は、事のあらましを帝へ報告したが、肝心な所が、思い出せない。


正気になった時には、女達が奏でる楽器の音《ね》と共に、羽衣を羽織った姫君が、雲母に乗って天に向かっていた。


泣きじゃくり、怯えていたはずが、朗らかに笑いながら、流れる不思議な曲に耳を傾け喜んでいた──。


「姫は、戻られたのか。涙されていたのは、この国が、まだ未熟だからかもしれぬな」


喜ばれていたのなら、それで良いと、帝は、中将率いる随身《ずいじん》達の失態に、お怒りになることはなかった。


計り知れない力が働いたのでは、仕方ない。その様な力を、取り入れられない、未熟な自身が悪いのだと、帝は、御自身をお責めになられた。


そのお言葉に、中将は、涙しながら、文を差し出す。


いつの間にか、懐に入っていた物で、姫からの文に違いないと、言葉を添えて。


今はとて天《あま》の羽衣

着るをりぞ

君をあはれと思ひ出でける


「……なるほど、羽衣を羽織ると、ここの事を忘れてしまうのか。月の世界の事しか、頭になくなる。それでも……」


帝は、お言葉を詰まらせた。


──あなた様への思いは、忘れとうございません──


最後に詠われていた、姫の心に、帝は頷かれ、


「離れてしまったが、姫が心安らかに過ごされるなら、それが、一番であろう」


消え入るようなお声で述べられると、帝は、静かに、奥へお移りになられる。


残された中将の頬には、更なる涙が伝っていた。


それを見守るように、どこからか、柔らかな月明かりが、差し込んで来た。


「ああ、姫君か。どうか、帝の元へも……」


中将は、明かりに向かって呟いた。

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