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「火薬があるんだ!厨房の地下、通路の奥、明日の正午……!」
叫ぶジルの声は、通行人の笑いと、兵士の冷たい視線にかき消された。
「ジル、ちょっと落ち着けって!いつもの“ネタ”より怖いって!」
ロマーノが慌てて腕を引っ張るが、ジルの顔は蒼白で汗に濡れている。
ただのペテンではない――それが見て取れた。
「俺は……本気なんだよ」
その言葉に、一瞬だけ、ロマーノの表情が引きつる。
けれど彼は、すぐに冗談みたいな笑顔を貼り付けた。
「……マジなら尚更ヤバいって!」
⸻
その昼過ぎ、ジルは王宮に忍び込んだ……
そんな……わけではなく、普通に門前で騒ぎを起こした結果、引きずられて謁見の間へと連行された。
「陛下ァ!!急ぎなんです!!お耳だけでも!」
玉座に座る王――アルフレッド・ヴァルディスは、訝しげに眉を寄せた。
「またお前か。ジルとかいう名だったな……?確か、街でしょぼいペテンを働いていた男」
「そ、それはさておき!!今は……とにかく、見てほしいものがあるんです!!」
「ほう? 見せたいものとな」
ジルの中で、叫びと嘘がせめぎ合っていた。
真実を語れば、誰も信じない。なら、
嘘で引き寄せるしかない。
「い、遺跡を見つけました!」
「……遺跡?」
「はい! 城の裏手、山を越えた谷の手前……草に埋もれてますが、古代の住居跡のような構造物が!」
周囲の兵たちが即座に動く。「またペテンか!」「こいつを下がらせろ!」
バリュス卿が前に出る。
「陛下、こやつの言葉に耳を貸すなど――!」
「……ふむ」
王が静かに声を落とした。
「ワシは歴史……中でも考古学に関心があり今でも研究しておる……しかも“遺跡”とな?それは興味深い」
「陛下!!」
「ほっほっほ。たまには散歩も良かろう。バリュス卿、護衛の手配を」
「……は、ははっ……」
⸻
王と護衛の馬車が、東門を出て森を越え、丘を登り始めた。
その後ろを、ジルが必死に走って追っていた。
「まさか……本当に、(城を出て)行ってくれるとは……!」
ジルの額に浮かんだ汗は、恐怖のそれだった。
本当に救えるのか?本当に未来は変わるのか?
ただ、ひとつだけ言えることがある。
ここまでしてようやく、人ひとり動かせたのだ。
“未来が視える”という真実ではなく、
“嘘”が――王の命を救うかもしれない。
⸻
そしてその瞬間だった。
城の方角から、雷鳴のような爆音が響いた。
振り返った誰もが、黒煙が天を裂くのを見た。
「な……なんじゃ、今の音は……?」
「城の方角……」
ジルはその場に崩れ落ちた。
「間に合った……っ……!」
唇が震えた。
王がここにいなければ、あの場所にいたら――
間違いなく、死が待ち受けていた。
護衛の一人が馬を駆けさせ、王宮へ向かって走り出す。
ロマーノがジルに駆け寄り、肩を貸した。
「お、おい……お前、ほんとに……助けちまったのか……?」
「……わからねぇよ。マジで。
でも……俺の“嘘”が、王を救ったって言われたら、……笑えねぇだろ……」