「あら起きたかい」
「ここは雅の医務室だよ」
「あんたは海上戦で敵兵に撃たれたのさ」
「覚えてるかい?」
覚えてる
忘れるはずがない
「お゛ぼぇ゛てる」
声が出ずらい
「無理に声出すんじゃないよ」
「あんたは腹と喉を撃たれたんだ」
「下手に喋ると血を吹くよ」
そうなのか
なら
何で生きているんだろう、痛いのに、苦しいのに、撃たれたのに、あの子も殺そうとしたはずなのに、やっと終わったと思ったのに。
何で、何で
なんで殺してくれなかったんだ
「…ん゛で」
「懲りないね、耳がないのかい?私は喋るなって言ったわよ」
「な゛んで、、、」
「なん゛で、殺゛じで、ぐれながったんだ!」
俺の視界は水で潤んだ
潤んだ視界の中に見える少女の顔は驚いているような、怒っているような顔をしていた。
俺は少女に平手打ちされた
痛くは無い、でも平手打ちされた所がとても熱く感じた
「あんたそれ本気で言ってるのかい?」
本気だ、俺は死にたかった
「この戦場で生きたくても生きれなかった奴も居るんだぞ」
分かってる俺の知人もたくさん死んだ
「あんたは生きてる、それを心に刻み込みな」
無理だ
俺は死にたいから
「お゛れは、、死゛にだがっだ」
「生ぎでてな゛んの意味があ゛る」
嗚呼なんでたろう
いつも以上に本音がスルスル出てくる、声は出しづらいのに、
「はぁ」
少女が一呼吸置く
「戦場を経験した兵士は皆あそこで死んでればって言うよ」
少女は笑った潤んだ瞳で
「でも」
「私はあんたが生きててくれて良かったよ」
俺の目は完全に水に眩んだ、まるで海の底だ、
次の瞬間、誰かの叫び声が聞こえた
助けを求めるような、親に縋る子供のような叫び声
俺の療養は一週間程度で終わった。奇跡的な回復らしい、きっと一週間治療に励み慰めてくれた彼女のおかげだろう、
パシンッ
少女は俺の背中を叩く、あの時の笑顔とは違うにこやかな笑で言った
「行ってらっしゃい、絶対生きて帰ってきて」
「、、、約束だから」
少女は小指を差し出す、期待の眼差しを向けながら
「嗚呼約束しよう」
「終戦まで生きて、また君に会いに来る」
「いってきます」
俺と少女は小指を絡めた、その約束の重さを胸に
俺は雅の甲板へ赴いた
仲間の兵士たちは俺の事を喜んで迎え入れてくれた、皆は言う
「生きてて良かった」
「死んでなくて良かった」
「また会えて良かった」
「助かって良かった」
良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった良かった
よかった
何が?
何が良かったんだろう、生きてる事が良いこと?死ななかった事が良いこと?
分からない
俺には、、、
俺は自分の言葉に蓋をした、流石にあの少女と話した時と同じヘマは踏まなかった、そのおかげか和やかな空気の中大将の命令を待った。
幸い戦場が安定していたらしく大将の命令は3日程来なかった。
でも和やかな時間はたった一言で終わりを告げた
「全軍報告」
「涼宮大将ガ敗シタ」
その報告が入った瞬間、和やかだった場の空気は一気に冬のシベリア並に凍った、そして俺たちは泣いた、泣いて泣いて泣き喚いた、昔見たアニメの大将は周りから嫌われていた、でも俺たちの大将はとても人情に厚い人だった、そんな人が亡くなったんだ、皆泣く
涙は嫌味かと思う程海のようにしょっぱい、大将が亡くなった海みたいだ
やっぱり生きてる事は良い事なんだ、死ねば皆が悲しむ、
でも俺は?
俺が死んでも誰か悲しむのだろうか、俺は大将の様に人情に厚い訳じゃない、母さんのように愛されている訳じゃない、父さんの様に威厳がある訳じゃない、あの少女の様に優しい訳じゃない
どうだろう
俺が死んだら
コメント
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続きが楽しみです