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次に『File7悲愛のアポロン』
アポロンは、ギリシャ神話に出てくる、音楽・太陽・予言・医術などを司る男神です。
アポロンは理知的な美青年として描かれる一方、怒らせると疫病の矢を放つなど、恐ろしい一面も持っていると語られています。
しかし、今回の『悲愛のアポロン』において重要なのは、アポロンが持つ数ある側面のうち「音楽を司る神」という部分です。
このエピソードには、シンガーソングライターのTAMAYAや、作詞の才能を持つ千秋など、「音楽」に深く関わる人物が登場します。
そのため、アポロンが司るものの中から「音楽」という一部分だけを取り出し、サブタイトルとして採用しました。
◇ ◇ ◇
次に『File9トロイの日本人形』
トロイの日本人形は、怪異探求倶楽部に教師である宗太郎が、妻が変わった原因が日本人形にあるのかどうか、調べてもらう為に依頼をすると言う内容ですが
トロイの日本人形は、作中で焔垂が口にした、トロイア都市とギリシャ連合軍の戦争『トロイア戦争』において、窮地に立たされたギリシャ軍が思いついた起死回生の作戦『トロイの木馬』から来ています。
また、当時のトロイアでは、カサンドラが王女を務めており、誰よりも先に木馬の中にギリシャ軍の兵士が潜んでいることを預言の力で見抜いており、注意喚起をしますがアポロンによる『呪い』のせいもあり、誰もカサンドラの聲に耳を傾けず、結果トロイアは壊滅的な被害を受けることとなった、という逸話があったりもします。
今回の『トロイの日本人形』では、そんな「トロイの木馬」が持つ、「本当の正体を隠したまま相手を欺く」という性質をタイトルに取り入れています。
作中では、あたかも「日本人形が原因で高館宗太郎の妻・ひよりが変わってしまった」かのように見せることで、読者にミスリードを仕掛けています。
つまり、表面上はただの「日本人形」ですが、その裏には別の真相が隠されている。
『トロイの木馬』の『木馬』が目眩しだったのと同じ様に『トロイの日本人形』の『日本人形』が目眩しという意味を込めサブタイトルに採用しました。
◇ ◇ ◇
次に『LastFile前編パンドラの匣』
パンドラの匣は、人類最初の女性とされるパンドラが、神々から与えられた『決して開けてはいけない匣』を好奇心から開けてしまい
そこから病気や争い、苦しみなど、世の中のあらゆる災いが飛び出してしまったとされています。
そのため現在では『取り返しのつかない事態』の比喩として使われる事も多いです。
LastFile前編は、御船愛子による未解決事件調査隊の千里眼騒動が主軸の話で
『天縁教団が失踪事件に関与している』というタブー、いわゆる『パンドラの匣』を開けてしまったという意味を込めてサブタイトルに採用しました。
◇ ◇ ◇
最後に『LastFile後編 タルタロスの泪』。
タルタロスは、神々の名前などではなく、ギリシャ神話に登場する『奈落』そのものを指す言葉です。
冥府を治めるハデスとは別の存在で、世界の最も深い場所にある、暗く恐ろしい奈落として描かれています。
つまり、ハデスが『死者が行き着く冥府』だとすれば、タルタロスはそのさらに深い場所にある、『永遠の苦痛」や『絶望』の象徴とも言える存在です。
LastFile後編は、天縁教団の教祖である坪野康仙が、自らの悲願である『修理固成』を実現するため、その計画を実行に移そうとするエピソードです。
その目的は、日本という国そのものを無かったことにしようとする、まさに国家そのものを奈落の底へ突き落とすようなものでした。
しかし坪野が理想として、悲願として掲げ続けてきた『修理固成』が、実は遥か昔から破綻していたという事実を知り、彼自身もまた絶望の淵へと突き落とされることになります。
そんな坪野を救ったのが、数少ない信者たちや、銚子、そして怪異探求倶楽部のメンバーたちの存在でした。
彼らとの関わりを通して坪野は改心し、自らの罪と向き合い、それを償うことを受け入れます。
『タルタロス』と『泪』。
一見すると相容れないように見える、対極の言葉を組み合わせることで『日本を奈落へ突き落とそうとした男が、最後には自らの過ちを知り、絶望し、そして涙を流しながら罪を償う』という、坪野の悲願と懺悔を表現したく、サブタイトルに採用しました。
また、余談ではありますがタルタロスの泪では日本神話の神の名前も頻繁に登場します。
まず修理固成で日本列島を造ったとされる創世の神『イザナギ』と『イザナミ』
そして灰熱病が蔓延した新開村を自衛隊が焼き尽くす『新開村緊急焼却計画』通称『カグツチ計画』
この『カグツチ』も火を司る歴とした日本神話の神の名前です。
新開村緊急焼却計画にカグツチ計画という神の名前の通称をつけた理由はふたつあります。
まずカグツチが火を司る神であるという点から。
新開村を焼き尽くすというエピソードを考えた際に、1番最初に思いついた神がカグツチでした。
次に『カグツチ』は『イザナギ』と『イザナミ』の間に生まれた最後の神という点です。
要はカグツチのお父さんがイザナギで、お母さんかわイザナミなんです。
また逸話としては、イザナミがガクツチを出産する際、カグツチが火の神だった為に大火傷を負って亡くなってしまい、それに怒ったイザナギがガクツチを首を切り落として殺してしまったというエピソードもあったりします。
この逸話は怪異探求倶楽部には採用していませんが
『カグツチ』によって新開村を焼かれてしまった坪野康仙が、両親である『イザナギ』と『イザナミ』に『修理固成』というかたちで、子供の過ちを償わせる!尻拭いをさせる!という神話的な流れにしたかったんです。
カグツチという名称が、火を司る神だからという『表面的な理由』と、イザナギ・イザナミの子だからという『神話に基づいた理由』の『二重構造』になっているという事です。
これは個人的に気に入ってる流れです。
#普通
野々さくら
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ありあ
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コメント
1件
×××さん、あとがきも読ませていただきました! 各サブタイトルにこんなに深い意味が込められていたんですね。特に「タルタロスの泪」、奈落と涙という対極の言葉を重ねて坪野さんの悲願と懺悔を表現したというお話、とても心に残りました。読み終えた今だからこそ、あのタイトルの重みがじわっと来ます。細部までこだわって作られた世界観、素敵です🌷