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商業ギルドの資料室の中央。鈍い銀色の巨大な鉄の塊――『魔法複写機』が、鎮座している。その表面には複雑な魔法回路の紋様が、血管のように刻まれていた。
「ひ、ひぃぃぃ……っ!! 神様、お許しをぉぉぉ!」
アンナは意を決して右手を突き出した。 その指先に握られているのは、一粒100万ルクの、あの高級サファイアだ。
アンナは目をぎゅっと閉じ、投入口へそれを放り込んだ。――直後、耳を刺すような破砕音が響き渡る。
ガリガリッ! メキメキッ……ドシュウゥッ!!
サファイアが砕け散った瞬間、機械の表面に刻まれた回路が、ドクンと激しく脈動した。底から湧き上がるような鮮烈な青い光が回路の隅々にまで行き渡り、資料室全体を青の光で染め上げる。
(お、お嬢様ぁぁ! 本当にやっちゃいましたよぉ! 一生涯かけても拝めないような輝きが、一瞬でただのインクにぃ! 心臓に悪すぎますってばぁ……!!)
「……おい、見たか。今、大粒の宝石を放り込まなかったか?」
「ああ。それも……触媒に使うには贅沢すぎるほどの逸品だぞ」
「一体どんな貴族に仕えてるんだ……?」
アンナは、錆びついた起動レバーを掴んだ。
「……んんん、重ぉぉぉいっ!!」
全体重をかけてレバーを引き下げると、腹の底に響くような重低音とともに、歯車が「ガシュンッ!」と回転を始めた。
吐き出される複写紙。原本は湿気で痛み、ところどころに判別不能な文字もある。しかし――。
「っ……わぁ……」
魔力を帯びた青いインクがしっかりと定着し、消えかけていた箇所も鮮やかに甦っていた。アンナは書類を大切に抱きしめた。