「速水さんはどこにお住まいなんですか?」
「三田にあるマンションです。朱里さんと二人暮らしなら問題ないかと思っていますが、いずれ子供ができる事を考えて一戸建てや、もっと広いマンションなど、新しい物件もボチボチ探しつつあります」
「尊さん、初耳なんだけど!?」
美奈歩が質問したっていうのに、私はぐりんっと彼のほうを見て訴える。
「いや、今初めて言ったけど、悪い。……でもそう思わないか? 子供が小さいうちはいいけど、成長してきたらプライベートな空間があったほうがいいし」
「それはそうだけど……」
子供……。
それを考えただけで、ジワジワと頬が赤くなって俯いてしまう。
「速水さんって、社長さんの息子さんですし、お金持ちですか?」
……美奈歩。それ聞いちゃうの?
ものすごーく微妙な気持ちになった私は、困った顔で継妹を見る。
でも彼女は私の視線など気にしておらず、尊さんに興味津々だ。
「一応、家族が増えても困らない生活はできると思っています」
尊さんがとてもソフトな表現をすると、家族はそれぞれ想像して納得したのか、「ほー……」という顔をしている。
気になるのは分かるけど、……うん、ソフトに頼む。
その時、玄関のチャイムが鳴った。
「あ、寿司きたかも」
亮平が立ちあがり、玄関に向かう。
その途中で電話台の所に置いてあったお財布を手に取ったから、今日のお寿司は亮平持ちか。ごちそうさまです。
そのあと、六人分のお寿司と茶碗蒸し、唐揚げを広げてのランチとなった。
美味しく楽しく過ごしていたんだけど、食べ終わったあとに尊さんがお手洗いに立った時、さり気なく美奈歩がスマホを手に取って席を立ち、なんだか気になってしまった。
手洗いを借りてドアを開けると、美奈歩さんが立っていて俺は一瞬ビビる。
リビングダイニングに行くにはスライド式のドアを開ける必要があるので、朱里からこちらは見えない。
……朱里、気にしてるだろうな。
「すみません、待たせてしまいましたね」
トイレ待ちされるのはちょっと気まずいものの、俺は美奈歩さんに声を掛け、スッと戻ろうとする。
「速水さん」
「はい?」
話しかけられ、俺は立ち止まる。
「継姉のどこが好きなんですか?」
……なるほど。きたな。
朱里から関係がギスギスしているとは聞いていたが、こういう感じでくるとは。
「先ほど朱里さんが言ったように、彼女とは十二年前からご縁がありました。会社で偶然再会するとは思っていなくて、その運命も含めて彼女のすべてを愛しています」
十二年間のストーキングは、朱里と相談して言わない方向にしている。
「……私が先に会いたかったな」
……なるほど。そうきたか。
「美奈歩さんにも、いつか別の出会いがあると思いますよ」
「……合コンとか行ってますけど、皆つまらないんです」
彼女は階段に座り、溜め息をついて言う。
「速水さんのお友達、紹介してもらえませんか?」
考えている事がみえみえだけに、涼の事も他の友人も紹介するつもりはない。
ただの出会い目的というより、付加価値を目的とした〝紹介〟でいい結果になる訳がないし、俺と朱里、ご家族、友人、全員を含めて今後の関係が悪くなる。
「生憎、フリーな友人がいないもので、お役には立てないと思います」
当たり障りなく言うと、美奈歩さんの目に落胆が宿る。
……これは、根っこから対処しなきゃいけないやつかな。
俺は溜め息をつき、床に膝をついて彼女と視線を合わせる。
「朱里さんに張り合おうとしていませんか?」
尋ねた瞬間、彼女の表情が強張った。
「……あの人から私の悪口を聞いているんですか?」
コメント
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Dr.Mikoto この継妹と朱里ちゃんの間に入り、二人が本音で話し合えるよう 導いてあげてください🙏
叱ってやってくださいまし。(笑)🙇♀️
Dr.Mikotoお手数をお掛け致しますか、このしょーもない美奈歩に講義をよろしくお願いします。一縷の望みをかけて…