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「…え?」
目覚めた瞬間、思わず声が漏れた。
布団から跳ね起き、反射的に手を伸ばして鏡を見る。
そこに映っていたのは、私ではない。
肩まで伸びたストレートの髪。
少し眠たげな大きな瞳。
見慣れない制服に身を包んだ少女。
(…どちらさまですの!?)
混乱する私の頭の中に、突然、文字と映像が流れ込んできた。
『高校恋愛ラブコメ〜甘酸っぱい恋♡〜』
「…タイトル、ベタすぎませんこと?」
嫌な予感しかしない。
さらに追い打ちをかけるように、あらすじまで丁寧に表示された。
「幼なじみ、クールな先輩、人気者の男子と巻き起こる恋と友情の学園生活」
(…設定、そのままですわね!?どこまで王道を突き進むおつもりですの、この物語!)
私は思わず頭を抱えた。
前世で身をもって学んだ教訓が、警鐘を鳴らす。
ーー目立つ者は、断罪される。
(ヒロイン…危険な役職ですわ。まずは目立たず、安全第一)
そう心に誓った、そのとき。
「いちごー、起きてる? 今日、一緒に学校行こうよ。」
ドアの向こうから、軽やかな声。
(来ましたわ…序盤から距離が近い系)
「いちごー?」
「は、はいっ!」
条件反射で返事をすると、ドアが開き、爽やかな笑顔の少年が顔を出した。
幼なじみ。
名前は、春人。
(間違いありません。初期攻略対象ですわ。)
「今日、一緒に登校しよ」
「い、いえ結構ですわ!」
思わず、勢いで断ってしまった。
春人が固まる。
「…いちご?」
(落ち着きなさい。ここは穏便に、自然に…)
「その…単独行動を心がけておりますの。」
「え?」
「ヒロインは…群れますと、危険ですので。」
沈黙。
春人は一瞬困ったような顔をして、なぜか、くすっと笑った。
「相変わらず、いちごは変だな。」
(褒め言葉ではありませんわね…)
…しかし。
(学校への行き方が、分かりませんわ…!一人で行動したら、確実に迷子ですわ!)
私は小さく、上品にため息をついた。
「…仕方ありませんわね。安全距離を保ちつつ、同行いたします。」
「よし、それじゃ出発!」
春人は元気よく走り出す。
私は必死に、その後を追った。
すでに周囲の視線が痛い。
目立ちたくないのに、なぜか足取りが大きくなる。
(完全に目立つ流れですわ…ですが、まずは学校に無事到達することが最優先)
こうして。
転生ヒロインーー
花園いちごの、慎重すぎる学園生活が幕を開けた。