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「いやぁ、それにしても今日は驚きの連鎖ですなぁ……」
僕が話したい内容が終わると世間話なのか、アリスが話しかけてくる。
今だにニヤけているアリスだった。
「あ、改めて自己紹介しましょう。私はアリスいいます。よろしくお願いするっす」
「アレン=ユベール。君も知ってるアレンだ。よろしく」
とりあえずの自己紹介。
先ほどまでの興奮状態がおさまり、友好的に接してくれたアリス。
初対面のわりに馴れ馴れしい気もするけど、同郷同士だからだろう。
別に気にすることもないが。
それにしても一つ気になるのは彼女の出自について。平民が特待生で来るなんて異例のことだ。
乙女ゲームの主要キャラ……主人公なら納得する。
「君も主要キャラなのかい?」
「いや、私は名もなきモブです」
だが、返答は思ってもみない回答だった。
「……そうなのか……特待生の平民なら乙女ゲームの主人公のありきたりな設定だと思ったんだが」
「名無しのモブっていうのも本当っすよ。乙ファンのシリーズやってもアリスっていなかったっすから。……私自重しないで勉学無双したんすよ。全ては……アレンきゅんに会うために」
アリスは右握り拳を胸に自身の辛い過去を思い出していた。
……なんか、申し訳なくなるな。その夢の結果は僕が憑依して想定していたキャラじゃなくなったわけだし。
「大変だったんだね。少し申し訳ないと思うよ」
「あ、お気になさらず。私アレンというキャラが好きっすけど、1番は見た目なんで。言ったじゃないですか見る専だって。アレンきゅんの可愛らしい見た目、気弱なのに強がる表情……それでいて攻略キャラたちのカップリングーぶつぶつぶつぶつ」
僕は一旦アリスからの言葉を遮断した。
それから1分ほどが経過。
「ーーだから私はコロコロ変わるアレンきゅんの表情が大好きなんす。あなたはリアルでアレンきゅんの怒る、アレイシアを愛でる姿、男らしい……新鮮なんです」
「あ…はい」
納得してるならいいや、安心した安心した。少し興奮気味のアリスは嬉しそうに語った。
「これからはアレン様と呼ばせていただきます」
「うん、よろしく」
「はい!」
暑いアレン愛を語り尽くしたアリスは満足しながらも握手を求めてきたので応じた。
立場は違えど同じ境遇だ。仲良くしたいし。
話を聞く限り多少問題はあれどアリスは常識ある転生者。
アレンのファンだが普通のファンの異なるあり方。
少しズレているけど、芯がしっかりしている。内容までは理解できないけど。
とにかくこれから良い関係が築けそうである。
握手をして不穏な空気がなくなったのは確かだった。
だが、それは長くは続かなかった。
「……アレン様?」
……何だろう、この背中から冷や汗が出る感覚、ゾクっとして今まで感じたことのない緊張感は。
自分を落ち着かせるために大きく呼吸をする。
背中から突き刺さる鋭い視線。
その正体はーー。
「…アレイシア?」
僕の愛しの婚約者だった。