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ちんすこう一味は砂漠を歩いていた。
遭難したわけではない。せっかく砂漠の星なのだから砂漠を満喫しようというちんすこうによる謎の提案により、わざわざ砂漠の上に着陸したのだ。当然の事ながらサーターアンダギーは軽い気持ちで提案を受け入れた事を後悔していた。
「うおー、あっつい! あはははは!」
能天気に騒ぐちんすこう。
「うむ、この星の砂は粒子が細かい。塗料の材料に使えそうだな」
宇宙船の新しいペイントを構想しながらぶつぶつ呟く愛玉子。
「はあ……いくらVRといえど、砂漠を普段着で歩くのは無謀でしたわ」
そんな二人を見ながらため息をつくサーターアンダギー。すると彼女達宇宙海賊の前で地面の砂が盛り上がり勢いよく何かが飛び出してきた。その数二つ。
「なっ、何ですの!?」
「フワハハハ! 我等はデザートウルフ!」
驚くサーターアンダギーの前に現れたのは二人の男だった。デザートウルフと名乗っているがどこからどう見ても人間のおっさんである。ついでに言えば二人だからデザートウルブズと名乗るべきだろう。
「タックル!」
間髪を入れずにタックルするちんすこう。ちなみに特に理由は無い。
「ぐわあっ!!」
「ああっ、兄貴!」
レベルの上がったちんすこうの捻りを加えた凶悪タックルで砂の海に顔面からダイブしたのはどうやら兄貴らしい。
「いきなり何をするんだ!」
当然の抗議だが、いきなり砂の中から現れて高笑いするおっさん二人などという汚らわしい物体に抗議する権利があるだろうか? いや、ない。
「タックル!!」
「ぎゃああ!!!!」
「さて、早く町に行きましょう。名物のサボテンステーキが待ってますわよ」
「そうだった!」
汚らわしい物体二つを沈黙させ、再び砂漠を行く宇宙海賊。目指すは町の名物サボテンステーキだ!
「いやいや、待て! 話を聞いてくれ!」
三人が立ち去ろうとしたその時、しぶといおっさん(兄)が砂から這い出し、ちんすこう達を呼び止めた。
「なんだよ、サボテンステーキでも奢ってくれるのか?」
愛玉子が振り返り、視線を向けるとおっさん兄弟が悶えた。
「はうっ! そのゴミを見るような目、いい!!」
ただの変態ブラザーズだったようだ。三人は無視して歩き始めた。
「待った待った、そうじゃなくて! 今砂漠で宇宙怪獣が暴れてるんだよ」
「へー」
まるで興味の無さそうな声を上げるちんすこうだが、本当に興味が無い。彼女の頭の中はサボテンステーキで一杯だ。
「最近アンノウンが多いんだよ」
アンノウンというのは、ナビゲーターのマニュアルにも情報が載っていない未知の宇宙怪獣の事である。以前ちんすこう達が山ごと薙ぎ払ったスライムワームもその一匹だ。
「それは気になりますわね」
サーターアンダギーが興味を示した。愛玉子もマーラーカオの事があるので少し気になったが、わざわざ戦う理由は無いなと思っていた。ちんすこうはサボテンステーキの味を予想している。
「わかった、退治してくれたらサボテンステーキを奢るから」
「さあ、怪獣退治だ!」
ちんすこうが即答した。
「反応が早いですわね」
こうして食べ物につられたちんすこうとアンノウンに興味のある二人、そして怪獣を退治して欲しい変態ブラザーズの利害が一致し、怪獣退治に向かう事になったのだった。