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「アンノウンはあっちのオアシスに陣取ってるんだ」
デザートウルフ(兄)が案内した先には、小型のオアシスがあった。カクタスに存在する都市は大型のオアシスを囲むように作られているのだが、このオアシスは小さいのでいくつかの人工的な屋根が見える他は池を囲むように植物が生えているだけだ。
そして、その池から顔を出す巨大な生物がいた。全身の形状は大型の草食恐竜のようだが、頭の部分は虎のように見える。どう見てもコイツがアンノウンだろう。サーターアンダギーは念のために図鑑を確認したが、やはりどこにも該当する宇宙怪獣のデータは存在しなかった。
「じゃあ早速退治するか」
愛玉子がどこからともなく手榴弾を取り出した。今度はパイナップルの愛称でお馴染みのマークⅡ手榴弾だ。暇があれば作成をしているので作成スキルがどんどんレベルアップしている。このまま彼女を放置していると最終的になにかとてつもなく恐ろしい兵器を作り出してしまうかもしれない。危険だ。
「ちょっと待ってくれ、そんなのを使ったら俺達の家が!」
デザートウルフ(弟)が焦って止める。ロリコンブラザーズの住処が破壊されようがどうでもいいのだが、慈悲深い愛玉子は手榴弾をポケットにしまった。
「ここに住んでいるんですの?」
サーターアンダギーが不思議そうな顔をして聞いた。どうせ住むなら町にすればいいのにね。
「ああ、俺達はここを拠点にして開拓者を襲う盗賊なのさ」
悪びれた様子もなく自分達が悪党である事を明かすデザートウルフ(兄)。どうやらちんすこう達の業が悪になっているから頼みごとをしてきたらしい。高度なAIを搭載したNPCは生きた人間と変わらない程に感情豊かに振舞うのだ。
「なるほど分かったタックル!」
「ぎゃああああ!」
「ああっ、兄貴!」
ちんすこうがタックルで兄貴を砂に沈める。今度は後ろから回転力を増してきりもみしながら頭を地面に突っ込ませた。砂の中から逆さに下半身が突き出している状態である。
「なっ、何をするんだ!」
抗議する弟を無視してパイナップルのピンを引く愛玉子。それをそのままオアシスに向かって投げつける。
「あっ」
ドカーン!!
みごとアンノウンと盗賊の住処は木っ端微塵になった!
「お前らぁ!」
怒りに任せ襲い掛かってくる弟に、サーターアンダギーが顔を向けた。
『恫喝』
「ひぎぃっ!!」
弟は恐怖のあまり泡を吹いてその場に倒れた。一体どんな顔をするとそれほどの恐怖を与えられるのか、それはご想像にお任せしよう。とてもじゃないが図解する事は出来ない。きっと見た者全てが泡を吹いて倒れるに違いないので公開するわけにはいかないのだ。ああ、画像でお見せ出来ないのが実に残念である。
「何か不愉快な言葉が聞こえたような気がしますわ」
ひえっ!
さて、盗賊とアンノウンを退治したちんすこう一味は改めてサボテンステーキを食べるために町を目指すのだった。
◇◆◇
「もうすぐカクタスにつきますねー」
「カクタスにはいくつもの盗賊団があるらしいな」
その頃、道明寺と長命寺もまた惑星カクタスに到達しようとしていた。
「名物はサボテンステーキだって。どんな味がするのかしら?」
「盗賊団は砂の中に潜って急に襲撃してくるそうだぞ」
二人の会話が噛み合わない。どちらも相手の話を聞いていないのだ。主に道明寺が相手の話を聞かないので長命寺がもう気にしない事にしたのだった。