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コメント
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いやもう、天魔かっこよすぎん?? 結婚指輪で「妻との時間」ってさらっと言って理咲の嫉妬誘う手腕、鮮やかすぎて震えたわ。しかもスーツ脱いでカジュアルに変身して、脚本家バーに涼二を追い込むって…「任せろ、次は旦那を堕とす」のセリフ、脳汁出た🔥 沙耶との連携もオシャレで、毎回読むたびに引き込まれる。続きが待ち遠しいです!
「大事な理咲さんに、これ以上のお怪我がなくて本当になによりです。……行きましょう。ここはもう、あなたのような女性が長居する場所ではない」
天魔の声はまるでビロードのように滑らかで、それでいて有無を言わさない重みを含んでいた。
「あ、だ、大丈夫です。せっかく今日、お約束をして、楽しみにしていたのに……」
理咲は縋るような視線を彼に送る。恐怖で震える肩、潤んだ瞳。普段なら男の庇護欲を完璧に煽るであろうその仕草も、天魔の計算し尽くされた盤面の上では、単なる「予定通りの反応」に過ぎない。
「こんな悍(おぞ)ましい目に遭われた直後に、仕事の話など。……僕が自分を許せません。食事はまた別の機会にしましょう。もっと相応しい場所を用意させてください」
天魔は理咲の細い肩にそっと手を添え、エスコートを開始した。大通りへと導く彼の足取りは、淀みなく、かつ優雅だ。背後では、別の人間が隠し持ったレンズがその一連の流れを、獲物を狙う獣のような精度で記録し続けている。
通りに出ると、彼はアプリで呼んだタクシーに理咲を乗せた。
「あ、あのっ。ほんとうにありがとうございました。予定を台無しにしてしまって……」
理咲が車内に滑り込みながら、消え入るような声で謝罪を口にする。その瞬間、天魔は左手で前髪をかき上げた。
街灯の光を反射し、彼の左薬指でプラチナの指輪が冷徹な輝きを放つ。 華美すぎず、しかし一目で「本物」と分かる重厚な光沢。それは、幸福な家庭と揺るぎない社会的地位を象徴する、最も残酷な境界線だ。
「いいんです。最近、妻との時間を持てていなかったので、今日は帰ってふたりで過ごします」
彼の左薬指には、美しい高級プラチナの指輪がはめられている。上品で嫌味のない、本物の金持ちが身に着けるような結婚指輪だ。さりげなく会話に仕込んだ愛妻家としての顔も。
理咲は一瞬顔を歪めた。内心では架空の妻に嫉妬しているはずだ。
天魔の爽やかな笑顔には無言の圧があった。彼女はただ頷くしかなかった。
「また連絡ください」
「はい。また来週にでも調整しましょう。タクシー代は払っておきましたから、そのままご自宅へお戻りください。お気をつけて」
スマートに手を振り、理咲を自宅へと送り返すことに成功した。
ひとりの女を救世主として魅了し、同時に男との縁を修復不可能にまで断ち切る。その鮮やかな手際に、モニター越しに監視していた私は呼吸をすることさえ忘れていた。
ふー、と大きく息をはいた。
「天魔……かっこよすぎでしょ……」
もしこれが復讐のための筋書きだと知らなければ。
もし彼が「別れさせ屋」という死神の化身でなければ、どんなに理性的で気高い女性であっても、あの優しい瞳に引きずり込まれてしまうだろう。
画面の中の神原新次郎という男は、タクシーが視界から消えた瞬間、その温かな微笑を氷のように冷たい無表情へと塗り替えた。 彼は迷いのない足取りで路地裏へと入り、開店前の静まり返ったカフェの扉を開ける。
その途端、私が今まで見ていた天魔を追うように映されていたものから、固定の監視カメラ映像へと切り替わった。
店内の照明を点け、奥へ入っていく天魔を映していた。彼の姿が消えたので、誰もいないカフェが映っている。
ここはどこなのかな。
暫く待っていると、奥から再び天魔が現れた。先ほどの装いと違い、高級スーツを脱ぎ捨て、ラフなカジュアルなジャケットとGパンに身を包んだ男に変身していた。 投資家の神原新次郎ではなく、また別の男の顔をしていた。顔つきも違って柔らかい。
モニター越しに、彼は正確にこちら――カメラのレンズを見据え、小さく手を上げた。 それは、幕間の終わりを告げる指揮者の合図だった。 直後、私のスマートフォンが震えた。もちろん着信は、天魔となっている。
「はい」
『沙耶、今ので第一幕は幕引きだ。修羅場は見応えがあったか?』
「ええ。あなたの予想通り。涼二が、あんなに情けない男だったなんて」
『言ったろ。それより沙耶。旦那のGPSのデータ転送してくれ』
「あ、うん」
すぐに天魔のスマートフォンへ送った。
『よし、確認した。新宿の雑踏から出られずにいるな。完璧だ。うまく袋小路へ追い込んでくれている』
「あの……今からどうするの? それに、今、天魔がいるお店ってどこなの?」
『ああ、ここは脚本家が集う店という設定で用意した舞台だ。夢を追いかけ、挫折し、泥を啜(すす)る人間が集まる場所として、関係者ばかりを集める店としてオープンさせようと思っていた脚本家バーだ。今からここへさっきのチンピラを使って旦那を追いこむ』
白い壁紙、浮き上がった木目美しい本棚に並べられたシナリオ指南書や脚本家のバイブル。L字型の木製カウンターは新しく綺麗だ。
カウンターの背面を飾る映画ポスターやサイン、伝説のプロット――それはかつて脚本家を夢見た涼二にとって、最も甘美で、最も残酷な毒。天魔が仕掛けたこの完璧な舞台(セット)に、なにも知らない涼二がまもなく放り込まれるというの――
『俺はこれから、秋也として涼二に会うつもりだ』
「うそ……!」
『任せろ沙耶。次は旦那を堕とす』
――!!