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時は2032年、日本発祥の体感型VRゲーム『ファンタジア・ドラゴン』というゲームが発売し、瞬く間に全世界で流行ることとなる。
ゲーム内容は従来のMMOをベースに作られており今まで他プレイヤーとはチャットのやり取りだったのが実際にアバター同士で会って会話することが可能になり、戦闘もシステム面で補助こそあるが基本はプレイヤーの技量によって勝敗を大きく分けるようになっている。例えばスライムの攻撃を避けるにはパッドで遊んでいれば左スティックを敵のいない方向に倒せば躱すことが出来る。キーボードも同じように敵のいない方向にキーを押せば回避出来た。しかしこの体感型VRではコントローラーもキーボードもなく、現実で動くようにしっかり回避する必要があるのだ。
名の通り本当にVRと言うにふさわしいゲームがこの年誕生した。
ゲームの起動方法は単純でヘッドギアという専用の機械にプレイするゲームのカセットをセットするかPCに繋いで『ファンタジア・ドラゴン』を起動させる。準備出来たらヘッドギアを頭に装着し電源を入れる。その後ベッドなりくつろげる体勢を摂り瞼を閉じる。しばらくすると意識がゲームとシンクロし無事に『ファンタジア・ドラゴン』の世界に旅立つことが出来るというわけだ。
そんな超ビックタイトルである『ファンタジア・ドラゴン』は人気すぎてカセットは売り切れるし、それに伴いヘッドギアもなくなっていく始末…。ダウンロード版をやるにしても肝心のヘッドギアがないと出来ないというもどかしさに少しの苛立ちを覚えた人も居たとか居なかったとか…。
競争率がとんでもなく激しいこのゲームだが私『姫崎 優奈』は友人である『今井 美咲』に誘われ少し前に公式アカウントが始めた抽選に応募し見事二人とも当選し物が昨日届いたので準備をして今日の夜二人でログインすることにしたのだ。
サービス開始から既に一ヶ月は経っている為色々攻略サイトも立ち上がってきていた、が私はこのゲームを楽しみたいのでそれらの情報を全てシャットダウンして新鮮な気持ちで挑もうと思う。ちなみに私はこの手のゲームはあまりやらないが、ミサがあまりにも推してきてその熱意に負けて一緒にやろうという話になったのだ。私はどちらかと言うと育成ゲームとかシュミレーションにRPGとかとにかく一人用のゲームばかりやってきたのでこういった知らない人と交流ができるゲームは未知の世界である。
不安とワクワクが混じったちょっと複雑な気持ちを胸に私は机に置いてあるヘッドギアを手に取り少し眺める。
…突然スマホに着信が入り誰からと確認すると一緒にやろうと誘ってくれたミサからだ。約束の時間にしては少し早いなと思いながらスマホを手に取り電話に出る。
「もしもーし?」
「ミサ?約束の時間よりちょっと早くない?」
「いや〜、ユウナの可愛い声を聞きたくてねぇ?」
「…は〜いお疲れ様でしたぁ。おやすみ〜」
「待って待って!冗談!冗談だから!」
「も〜、アホなこと言ってないでなんで電話かけてきたのよ?準備ならこっちで来てるからね?」
「その件なんですけどぉ…。 」
「なに?」
「今日ちょっとできそうになくて…。」
「はぁ!?どゆこと?」
「ほら、私さこのファンタジア・ドラゴン楽しみすぎてネットサーフィンしてたんだけどね?それがお母様にバレちゃいまして…。」
「……。つまるところこれに夢中になりすぎて勉強の方をおざなりしてたのがバレたのね? 」
「…はい。察しが良くて助かります。」
「じゃあ今日はやめとくって形でいいよね?」
「いや、せっかくだしユウナこのゲーム体験してきなよ!」
「えぇ〜…。私ひとりでぇ?」
「こっちはネットで情報得てるから何となく分かるけどユウナは本当に何も知らないんでしょ?」
「どーせなら新鮮な気持ちで挑みたいからね。」
「私は他のゲームである程度知識もあるからユウナが先進めても簡単に追いつけるし、先進めて感想ちょうだいよ。」
「まぁ…別にいいけど私が強くなりすぎてあれこれ言ってきても適当にあしらうからね?」
「アッハッハッハッハッ!大丈夫大丈夫!ユウナじゃそんなに大差つけられないだろうからね!」
「腹立つなぁ…。」
「じゃあ今日は私できなくなってごめんね?その分ファンタジア・ドラゴン楽しんできてよ!」
「はいはーい。」
そう言って私は通話を切り、スマホを机に置いてひとつため息をつく。そして膝に置いていたヘッドギアを手に取りファンタジア・ドラゴンがセットされてることを確認したあと頭に装着してベッドに横たわりゲームを起動する。
起動するや否や最初に目に飛び込んできたのはプレイヤーネーム。入力の他にいくつか注意事項が書いてありその中の一つに原則一度決めた名前を変えることできない、と注意がきがされていた。課金要素で変えることが出来るがそもそも名前を逐一変える理由がないためなんでこの要素があるんだろうなぁなんてふと思ったがそんな考えをすぐに捨て去り目の前の問題について思考切り替える。
というのも、こういったゲームで使う自分の名前など私は持っていないからだ。今までやってきたゲームでも名前をつけることはあったが大体は変な名前付けて遊んでいたため、真っ当な名前を考えるなんて私にはできない。人によっては本名をもじった名前とかが出来るんだろうが私の名前的にそれは難しいので、どうするか…。
……熟考すること十何分、必死考えたがやはりまともな名前が思い浮かばなかったので、デジタルタトゥー的な名前にしてやろうということで本名である『姫崎』を使ってそのまま『プリンセス』という名前にした。うん。皆まで言うな、私にはわかる。死ぬほどダサいしわっかりやすい黒歴史になるんだろうなぁという事を。しかし私は心が強い女、これくらいのバカをしておけば将来の笑い話に使えるという心持ちでこの名前で決定しようと思う。恐らく翌日あたりには深く後悔してるだろうけど……。
名前を決めたあとはアバター作りに入るが、ここで個性が分かれると思う。自分に寄せて作る人もいればロールプレイするために付けた名前に似合う姿を作る人もいるだろうし、単純に自分好みのアバターを作る人もいるだろう。ちなみに私はあんなふざけた名前にしたのでこの際見た目もそれっぽくしてやろうと偏見でできたアバター作ることにした。
アバター作りに大体二時間くらい使い、ようやく完成した。その後はお待ちかねの職業選択のようだ。王道の戦士に剣士、魔法使いと色々職業があるが私は『プリンセス』というふざけた名前にしたのでこれで逆にギャップを作るために前衛職を選ぼうと思う。戦場で華麗に舞い踊るような女性剣士とかかっこよく見えると個人的には思うので、私はオーソドックスな『剣士』にした。前線で戦う姫とは文字通り戦姫すぎる気がするが、話題性として高いから良しとしよう。
そして最後ステータスの振り分けだ。一応選んだ職によって最初の数値は決められてる。例えば私が選んだ剣士なら攻撃力が少し高く体力素早さが次点で高く防御や魔力量に魔法攻撃力などは申し訳程度というステ振りになる。まぁ、簡単に説明すると物理攻撃の火力の高さと速さで切り込んでいく完全にPSがものを言う玄人向けの職だと思う。ここに追加で数値を加算できるっていうシステムで、現在の手持ちはたったの5ポイント。これをどう使うかだけど、正直よくわからんのでオススメ値である剣士の特性をフル活用するため物理攻撃力と素早さに数値を極振りしていこう。赤を好む仮面のロボット乗りも話してた。当たらなければどうということはないって。
とにかくこれで初期設定は終わりいよいよFDの世界に乗り込めるってわけだ。どんなところか楽しみだなぁ♪