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最後のライブ。
私の心臓は今にも飛び出そうなくらい鼓動が激しかった。
美咲と対面するのはステージに上がってからだ。
ライブバトルと言ったものの、本格的な審査員は居なくて観客席の人やライブ配信で見てる人達が投票するというものだった。
「千紗。頑張って、最後のライブ楽しみなさいよ」
「はい!!!」
ステージに上がると、そこに居たのはあの時と全く変わらない美咲だった。
「久しぶり千紗。」
ニコッと笑いかける美咲の笑顔が気味が悪くて仕方がない。散々言っといてライブバトルを仕掛けてくるなんて…
でも…また同じステージに立てるのも嬉しく思えた。
1曲目、いつも通り歌い終わって次は美咲がうたう番だった。
私の記憶上、美咲の歌声はとても透き通っていた。でもあの時とは違う。見た目とは裏腹にパンチの効いた歌声でオリジナル曲を披露していた。それに激しいダンスも加えて。
私の脳裏に思い浮かぶのは美咲が言っていた言葉達だった。
負けてしまう…やだ、最後なのに_
「千紗ちゃん!頑張ってー!!!!」
声がした方向へ向くと、見覚えのある顔があった。
あぁ、あれは養成所で声をかけてくれた子。見た目も声も成長しているはずなのに、何故か分かる。
これは私とファンの心が通じ合っているからだった。
「頑張るよー!!!!」
そっちが本気で挑んでくるくらいなら、私は楽しさで挑んでやる。
私は歌った。美咲を推してる人の視線も全部私に移すような歌声で、みんなを魅了する。
会場は私色でいっぱいになった。
全曲を歌い終わって、ついに投票結果発表が行われる。
正直言って、勝つだろうと思っていたが、まさかの結果に陥った。
結果は引き分けだった。
勝や負より最高に悔しかった。
でも、どのライブよりも最高に楽しかった。
「みんな…私とミーこのライブどうだった?」
「もうみんな知ってると思うけど、私は今日このライブでみんなとお別れします。」
観客席では鼻を啜る音や泣き声が聞こえる。
「私は、みんなにいっぱいの幸せをもらいました。
私が辛い時だってみんなは私を笑顔にしてくれた。でも、私もみんなに笑顔を届けられました。それが私の一番の幸せです。」
「わたし千紗は、10年、20年、その先の100年や1000年を超えても、ずっとあなたのアイドルです。」
そして、私は美咲に自分マイクを渡して、会場全体に聞こえる声でありがとうございました。と言って舞台裏に行った。
美沙都さんは
「よく頑張ったわ、お別れの時でもファンに泣き顔を見せないなんて。流石アイドルね(笑)」
「はい。美沙都さんもありがとうございました!!」
「え!芸能界は辞めないのよね、?」
「あぁ、それは美沙都さんを安心させるためで芸能界も実は引退を…」
「バカ!こんな時まで心配は要らないのよ!!素直に言ってくれれば良かったのに…
でも、あなたの先生兼マネージャーとして6年間一緒に入れて楽しかったわ。こちらこそありがとう。」
「はい…!!また飲みに行きましょうね(笑)」
「もちろんよ 」
そして私は6年という長いようで短いアイドル人生に幕を閉じた。