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復活したとはいえど勝ち目がある訳ではない。攻撃力で勝負するのはあまりにも無謀だと思う。
そこでナギは決心を固める。
「戦略的撤退っ」
と言いながら職員室に姿を紛らす。
勝ちにこだわる、彼女なら必ず追って来る。そう言う確信が何故だかあった。
職員室は障害物が多くすぐに逃げることが困難だ。
そして物が多いおかげで隠れる場所が多い。
「まちぇ!」
案の定追って来る。そして彼女が部屋に入った時、ナギの姿はない。そう隠れたのである。
「隠れるな、正々堂々戦え」
強くそう言いながら、斬撃を連発しまくる。
「正々堂々って、人間と化け物じゃ釣り合わねっつーの」
と小声で嘆く。
幸い、その斬撃はナギを捉えることはなかった。
職員室の机の残骸やら小物が無造作に散らばっている。
斬撃が止み静寂に包まれるこの部屋に、荒い呼吸音だけが鳴り響く。ここで一つの仮説を立てる。そう斬撃の回数制限。
きっと体力を消費するのだろう。呼吸が荒くなっている事からそんな事を思いつく。だが斬撃の原理はわからない。そもそも斬撃なのかもよくわからない。彼女の足音がこちらへ近づくのを鼓膜が捉える。
一つまた一つと音が大きくなる。
心臓の音が大きく、早くなる。
呼吸をも忘れるくらい緊迫しているのを感じる。
音が最大限になった時、そこから急に出て、渾身の回し蹴りをかます。それはまさかの彼女を捉える。
「オラァァ!」
「うっ」
聞いてそうなセリフとは裏腹に彼女はびくともしない。
そう、鱗で守っていたのだ。初めて蹴ったためか脛に激痛が走るがアドレナリンが脳を支配しているためかあまり気にならない。
「鱗でどこでも守れるって聞いてないんですけどっ」
「やっと見つけた。今度こそアタシの勝ち」
指を上に振る。その挙動がナギの目は捉えていた。
指の方向に斬撃が飛ぶのは、さっき死んだ時に分かっている。
咄嗟の横っ飛びが、ナギの命を繋ぐ。
「あっぶねー!また真っ二つになるとこだったぜ」
「なんで、よけりぇ……」
「俺の動体視力舐めんな!ドッチボールで一回も当てられたことねーんだよ!」
軽口を叩いているが当然、彼に余裕はない。
「ッチ」
彼女の様子はさっきと違い何か焦りを感じているようだった。
余裕が消えたと言うことは仮説通り、斬撃には回数制限、体力をそこそこ使うようだ。
そしてナギは室内を不規則に走り距離を取る。
「オラオラ、どうした?お得意の斬撃は出さないんですか〜
あっそか。体力クソ雑魚だからもう出せないか〜」
煽りを入れ斬撃を出させる魂胆だ。
「っるせー、さっさと死ね」
彼女の声が一段階いや二段階下がる。
そこにはただ純粋な殺意だけがある。
「ヤッベ」
彼女は次々と斬撃を飛ばす。
ナギは最後の切り札を出そうとしているが、その斬撃がその隙を潰す。
「まだそんな出せるとか聞いてないんですけど!」
「喋るな。汚い息を吐くな」
彼女は斬撃での攻撃をやめ、一気に距離を詰める。
「そんな口臭きつかった?毎日歯磨きは欠かさずしてるから、意外と心に刺さるんですけど」
そんなことを言いつつ、どさくさに紛れてマッチをだし火をつける準備をする。
「何もしゃせない」
「っ……今度は打撃戦k」
怒涛のラッシュを噛ます彼女の打撃が一発、ナギを捉える。
その打撃の衝撃は内臓を掻き回されるような激痛。
そして宙を舞い壁にめり込む。
「ヤッベ……体が……動かね……」
「最後に言い残すことは?」
彼女の表情に温度はなく一切の隙がないように見える。「どっかの中ボスみたいな発言じゃん」と頭に一瞬だけ浮かんだことは置いといて、ここを逃したら負け確。彼女は集中している。以上なほどに。
「ああ、そうだな。今だ!ワトソン!後ろからやっちまえ!」
彼女は集中している……だからこそやってしまった。後ろを向くと言うほんの一瞬の隙。
「誰もいな…」
「おらー粉塵様の出番だー」
そして粉塵が無造作に宙を舞い、彼女の視界を奪う。
シュッとマッチの火をつける音が小さくなる。
「お前…….や……」
「俺に隙を見せたのはミスだったな!慢心、それがテメーの敗因だーー!あとワトソンって誰ーーー!」
雄叫びを上げながら、その炎を投げ込む。その瞬間辺りは消し飛び、鼓膜が破れるほどの騒音が辺りを包み込む。天井が崩れ、何が何だかわからないくらいグチャグチャになり、無数の瓦礫が全てを覆う。それはもはや部屋の形をなしてない。
死んだと思う隙もなく、ナギの命は儚く散った___
「___なんか爆発音したんですけど」
主犯の彼女が言った。
「大丈夫、ナギなら」
そんな確証は全くない。だがシオンの目には光が宿っている。
「見にいきましょうよ、流石に心配…」
モブの片割れが重い口を開く。
「じゃあここから出るなら、なんか武器になるもの探そうよ」
「そ、そうだね」
棚にはよくわからない薬品がある。粉塵はナギが全部持って出てしまったのでない。武器はさっき拾った木の棒、いや棍棒しかない。蜘蛛の巣がはった不気味な部屋、足音がよく聞こえる。足音が……
「みんな静かに」
小声でシオンが警鐘を鳴らす。
「なんだよ、急に」
人差し指を立てそれを口の前に置く。それは静かにと言う合図だと視界の悪い今でもはっきりと分かる。
トン、トンと言う音が強調される。そして理科準備室の扉の前でその音が消える。ナギが帰ってきたんだと言い聞かせる。
モブがドアに近づく。きっと確認したかったのだろう。最大限まで近づきドアノブに手を掛ける。
「う…あ…」
彼女の背中から手が生えている。いや違うドアごと体を貫かれたのだ。赤黒い液体が一滴、二滴とこぼれ落ちる。そして奴が手を引いた時、彼女の血は床を染め、シオン達の足元を濡らす。
そして奴がバカデカい斧を片手に周辺の壁ごとドアをぶった斬る。
逃げ場はない。そんな状況が彼女らの絶望をさらに強くするのだった。
番外編1話 人生とゲームは表裏一体
ある日の休み。
ここはナギ宅である。
「じゃじゃーん!人生ゲーム持ってきたよー!」
「いえーい」
微妙な盛り上がり方をするナギ、宮本くん、そしてこのアパートの主、ヒマリさん。
「なんか微妙な反応だねー。お泊まりと言ったら、人生ゲームって相場は決まってんだよ!」
「まあ……だって、何回もやって事あるし……」
割とストレートに飽きた発言をする宮本くん。少しだけシオンが可哀想に思える。
「チッチッチ、今日はいつもの人生ゲームとは違うんだなーこれが」
人差し指を前に出して左右に揺らし得意げな顔をしながら自信に満ち溢れた発言に少し期待するナギ一行。
「何が違うってんだ?」
「それはやってみてからのお楽しみってやつさ!」
年上のヒマリさんの発言に対してかなり緩く返すシオン。「なんか嫌な予感がするのは俺だけだろうか」と思いつつ目を輝かせる彼女を見る。
そしてゲームが幕を開ける。
見た目は普通……
「なんか……ルーレットにマイナス1歩くね?」
シオン以外が口を揃えて発言する。
「ふふふー!一歩進んで二歩退がる、そう言う精神だよ、皆の者」
なぜか偉そうなシオンに呆れるナギと宮本くん、そして何故かやる気満々のヒマリさん。
じゃんけんで順番はヒマリさん、シオン、ナギ、宮本くんと言う感じになった。
オーナーがルーレットを回しす。カタカタ音を立て、針がマイナス1を指す。
「これ、どうすんの?」
「これはね……うーん……ここ」
シオンがオーナーの駒をスタートの一個後ろの床のところに置く。
「いや、そこなんかよ!普通ここは進まないとかが相場だろーがー!場外じゃねーかー!」
思わずツッコミを入れてしまうヒマリさん。
その光景が新鮮で笑いを堪えられないナギと宮本くん。
そしてシオンの番が来た。
「ふっふっ、こい5!」
ルーレットを回しなんと宣言通り5を出したのだ。
(なん…だと…)
宣言通り出すのはなかなか至難の業だ。
だが6分の1。たまたまでも起こりうる確率だ。
「1、2、3、4、5……次のターンの人の財布を拾って1000円ゲット……はい1000円」
「はい」
ゲーム内通貨を渡すが、シオンは横に首を振る。
「違うよ、本物だよ!」
とても悪そうな顔をしている。まさかとは思うが金をむしり取るために改造してきたとはこの場の全員が思わなかっただろう。
(いや、まて、これは俺も金を……)
そしてこの瞬間、みんながこう思ったのであった。
ナギは渋々、財布から野口英世を取り、シオンに渡す。
そしてナギがルーレットを回す。そしてその針は3を指す。
「1、2、3、えーなになに?公園のホームレスの大群に襲われている。ん?なんか選択肢あるんですけど、何これ?」
「まあまあ」
ニヤニヤしながらシオンは流す。嫌な予感しかしないが致し方ない。
「えーと?一、財布をおいて見逃してもらう、ニ、戦う。なんか絶望的な未来しか見えないんですけど、大丈夫そ?」
「まあまあ、ナギくん、ゲームなんだし楽しもうよ」
宮本くんが背中をポンと叩く。それに応じてため息をつくが「まあやってやるか」って思ったのであった。
「えーじゃあ、二で」
「ニだと……」
シオンはイベント表と言うノートを取出ししげしげと見る。
「ルーレットを回して3以上ならバトルに勝つ、2以下なら……まあ回しな」
「2以下だと何!?何が起こるんだって言うんだパトラッシュ!?」
そして渋々、ルーレットを回しハリがゆっくり動く。2以下が出たらどうなるか気になるが負けイベ確定なので出てほしくない気持ちが混同している。
そしてハリが止まり1を指す。
「え、これどうなるの?」
「確かに気になるな」
オーナーが興味ありげに顎に手を添える。
「なんか嫌な予感がするな、ほら全財産失う的な」
「バカっ、フラグ立てんな」
「そうだね……2以下だと、ホームレスの軍団が実は反社の軍団でボコボコにされ全財産むしり取られる(自身以外のプレイヤーに全財産を分配する)だって」
「だって……じゃねーよ、誰得だよ!実は反社~なら勝つイベントはなんなんだよ!」
そんな嘆きは虚しく散り、財布の中身は空になってしまった。同時にナギの心も空っぽになった。
「ぼくは時透無一文です……」
ナギの目には光が宿っておらず、死人みたいだった。
「おい……それ、いろいろと怒られないか?」
オーナーが心配そうにしている。
「大丈夫、大丈夫。どーせ誰もみてないから」
シオンが真顔で淡々と述べるが
「それ、作者泣くぞ……。まあ事実だけど」
オーナーがフォロー……になってないフォローをする。
「まあまあそれは置いといて、ナギくん人生はいろいろあるもんだよ。人生ゲームだけにw」
ナギの方にポンッと手を置きドス黒い笑みを浮かべる。
「こいつ…」と思い拳を作るが宮本くんにまあまあとお出されてその場は治る。
to be continued