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6件
わぉ
罪人だぁ
「はじめまして!これからよろしくね!」
初めて入ったリビングには大きな水槽が置いてあり、赤い金魚が20匹近く泳いでいた。
「よ、よろしくお願いします」
「やだぁ。そんなに改まった挨拶なんていらないいらない!」
よかった、ここに暮らしている人たちみんないい人そう。
「じゃ、これからよろしくね!このシェアハウスで6人目になるリナちゃん!」
「うん!よろしくね!」
*****
大学生になって学校近くのシェアハウスを借りた。
ここには同じ大学に通う5人の女の子たちが暮らしている。
アリス。
ミサト。
サトコ。
タマミ。
ナズナ。
みんな気さくでいい子ばかり。
「あ、砂糖なくなっちゃったぁ」
共同キッチンでパンケーキを作っていたアリスがミサトの砂糖を手にとり、ボールに入れる。
「それ、勝手に使っていいの?」
「何言ってるの?ここはシェアハウスだよ?なんでもみんなでシェアしなきゃ!ほら、できたよぉ!」
できあがったパンケーキはとても甘くて、美味しかった。
*****
「あれ?私ドライヤーどこにやったっけ?」
昨日使ってテーブルの上に置いていたはずのドライヤーが見当たらない。
「ふふふっ、リナ、ドライヤー返すね」
ミサトが部屋の外からドライヤーを手渡してくる。
「え、あ、うん…」
ミサト、勝手に私の部屋に入ってドライヤーを取って行ったってことだよね?
どうしてひとこと言ってくれないんだろう。
*****
数日後。
今度は部屋の本棚から参考書がなくなっていた。
リナは慌ててリビングへと向かう。
「ねぇみんな、私の参考書知らない?」
「あぁ、参考書ならここよ」
ナズナが読んでいた本を見せてくる。
「どうして私の参考書をナズナが読んでるの?」
「ちょっと借りただけでしょう?どうして怒っているの?」
「どうしてって…」
「まぁまぁ2人とも喧嘩しないで。ここはシェアハウスなんだから助け合うのは当たり前よね?」
サトコが間に割って入る。
「それは、そうかもしれないけど…」
でも勝手に使うのはどうかと思う。
この間のドライヤーのこともあるし。
「私は勝手に自分の部屋に入られることが嫌なの」
思い切って言ってみると一瞬沈黙が降りてきて、そして私以外の全員が笑い始めた。
「あははっ!リナって面白いこと言うねぇ」
「本当ね。相手の部屋に入らなかったら、シェアできないじゃないの」
「ふふふっ。でも、リナみたいな子がいても楽しいかもね」
笑って取り合ってくれない5人にリナは参考書をひったくるようにして取り戻し、自室へと逃げ込んだのだった。
*****
数日後、アルバイトですっかり帰るのが遅くなってしまった。
シェアハウスの電気は消えていて、みんな寝静まっている。
「起こさないようにしないと」
音を立てないように玄関を開けたとき、リビングに電気がついた。
あ、まだ誰か起きてたんだ。
あれはサトコ?
サトコはソファに置いてあるバッグを手に持ち、中から財布を抜き出した。
え、あれってタマミのカバンじゃなかったっけ?
サトコは財布の中から一万円札を抜き出してポケットに入れると、そのままリビングを出ていったのだった。
*****
翌日。
「ねぇタマミ」
「リナ。深刻そうな顔してどうしたの?」
「あのね、昨日の夜偶然見ちゃったんだけど…」
おずおずと話し始めるリナに、タマミは終始笑顔だった。
「なぁんだそんなこと?」
「え?」
「ここはシェアハウスなんだからそんなの当然でしょう?」
「なにそれ、どういうこと?」
「だーかーらー!ここではどんなものでもみんなとシェアするってこと!」
バンバンとリナの肩を叩いて説明する。
「リナってば深刻な顔してるからどうしたのかと思って、心配しちゃったじゃん!」
笑いながらタマミは行ってしまった。
リナは呆然とその姿を見送ったのだった。