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#追放
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(見て見て~、エルネスト様~)
(こおーんな可愛い女の子が)
(こおーんなごっつい男の人を)
(サクサクやっちゃってますよ~)
エレンは、頼まれてもいないのに、
ダレスの部隊を襲撃するエルネスト隊に紛れ込んでいた。
「小斧か。変わった武器、持ってるな」
エルネストは素直に感心していた。
(見てる見てる)
(でも、もし……“僕と一緒に逃げよう”なんて言われたら)
(わたし、どーしよーかしら)
エレンは勝手に未来を想像し、頬をゆるませる。
その横で、また一人、アメリア兵が倒れた。
山間の街道では、赤い火の手が上がっていた。
それを見た王国軍将軍カンティーヨは、すぐさま救援隊を送り出す。
だが、先行してセントクララへ潜入していた革命軍カミロ隊が、
その進軍を阻んだ。
剣戟。
怒号。
暗闇の中で隊列は乱れ、王国軍は敗走する。
「撤収、撤収~!」
ダレスは散り散りになった部隊をかき集めると、
セントクララ応援を断念した。
もはや勝ち目はない。
この戦場には、エルネストがいる。
そして、なぜか小斧を振り回す女までいる。
「バナナへ帰還する!」
ダレス隊は夜の闇へ逃げていった。
そして——
街の空気が変わった。
あちこちで民衆の歓声が上がり始める。
「革命軍だ!」
「王国軍が負けたぞ!」
「終わるんだ……!」
その熱狂を前に、カンティーヨもまた、
戦意を失った。
「……撤退する」
王国軍は、バナナへの撤収を開始した。
翌日の攻略は、
拍子抜けするほどあっさりしたものだった。
王国軍の主要拠点は、
ほとんど抵抗することなく次々と降伏していった。
新年の祝賀パーティーは、華やかだった。
音楽。
笑い声。
金色のシャンデリア。
王宮では、誰もがまだ“王国は続く”と信じようとしていた。
だが——
扉が乱暴に開かれる。
泥と血にまみれた男が、息を切らして広間へ転がり込んできた。
ダレスだった。
続いて入ってきた役人が言う
「セントクララが——落ちました」
その瞬間。
バティスタ王の手から、グラスが滑り落ちた。
甲高い音を立て、
赤い酒が床へ広がる。
広間から、音楽が消えた。
「……馬鹿な」
誰かが呟く。
だが、ダレスは首を振った。
続々と報告の役人が入ってくる
「革命軍がセントクララ市内へ侵入」
「カンティーヨ軍は撤退」
「もう、止まりません」
沈黙。
そして——
バティスタ王は、そのまま逃亡した。
王族。
側近。
財宝。
運び出せるものだけを抱え、
王は夜の港へ消えた。
ケルパ王国は、
たった一夜で崩壊した。
ダレスは、アメリアへ帰る船の甲板から、
遠ざかるケルパの島影を睨みつけていた。
風が、軍服を揺らす。
敗北だった。
完全な。
革命軍。
エルネスト。
そして、あの狂った熱気。
すべてが、彼の計算を狂わせた。
ダレスは憎々しげに呟く。
「……私は、必ず戻ってくる」
その声は、波の音に消えた。
夜明け前のバナナは、奇妙な静けさに包まれていた。
王国軍は、もう戦っていなかった。
いや――戦えなかった。
将軍たちは逃げ、役人たちは書類を焼き、
金持ちは港へ殺到し、
兵士たちは制服を脱ぎ捨てていた。
誰もが理解していた。
ケルパ王国は、終わったのだと。
その朝、
革命軍はゆっくりと首都へ入城した。
先頭を進むのは、フィデロ。
煤と泥にまみれた軍服。
伸び放題の髭。
だが、その目だけは異様な熱を宿していた。
沿道に、民衆が集まり始める。
最初は恐る恐る。
だが一人が叫んだ。
「革命軍だ!」
それを合図にしたように、
歓声が街を埋め尽くした。
「フィデロ万歳!」
「革命万歳!」
「王国は終わった!」
窓が開き、
女たちが花を投げ、
子どもたちが兵士の後を追いかける。
泣いている老人もいた。
ある者は祈り、
ある者は笑い、
ある者はただ呆然と空を見上げていた。
フィデロは馬上から群衆を見渡し、
それにこたえるように手を振った。
だが――
その少し後ろを歩く男は、
歓声には応えなかった。
エルネストだった。
肩には銃。
泥だらけの軍靴。
疲れ切った顔。
彼は歓喜する民衆ではなく、
崩れた建物の陰で座り込む痩せた子どもを見ていた。
革命は成功した。
だが、
それだけでは何も終わらない。
エルネストは、それを知っていた。
「どうした、浮かない顔だな」
隣を歩くカミロが笑う。
「勝ったんだぞ」
エルネストは少し考え、
煙草に火をつけた。
「……さてな」
紫煙が、朝日に溶ける。
「革命は」
「ここからが本番だ」
エルネストのは先ほどまでの
表情を笑顔に変え
希望に満ち溢れた未来を想像していた
遠くで鐘が鳴った。
その音は、
革命の勝利を告げる鐘であると同時に、
新しい時代の、
始まりの鐘でもあった。
「さて、帰りますか」
引き継ぎの業務を終えたフローレンスに、サイラスは声をかけた。
港には、スパルーニャへ戻る船が停泊している。
潮風が静かに吹いていた。
「あの……その……」
珍しく歯切れの悪い様子で、フローレンスが視線を落とす。
「この前は、ごめんなさい」
サイラスは少しだけ目を丸くした。
「ああ、気にしてないよ」
「こっちこそごめん」
あの時の平手打ちを思い出し、
フローレンスは小さく肩をすくめる。
しばらく沈黙が続いた。
遠くでは、
革命軍の兵士たちが新しい旗を掲げている。
「……この国は、きっと良くなりますよね」
フローレンスは祈るような表情で言った。
「エルネストさんたちが……変えていってくれるんですよね」
サイラスは、その横顔を見つめる。
革命は勝った。
だが、
戦いは終わっていない。
アメリアが、このまま引き下がるとは思えなかった。
勢力の空白となったこの島国には、
いずれ様々な国が手を伸ばす。
砂糖。
港。
資源。
そして、戦略的位置。
欲しがる理由はいくらでもある。
出来たばかりの小さな革命政府が、
それに耐えられるのか。
サイラスは、一抹の不安を覚えていた。
だが——
「ああ、そうだな」
彼はそう答えた。
水平線の向こうでは、
朝日が静かに海を照らしていた。
第一部 完
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