「ん”〜…」
白石が呻き声を出し、上にあげた腕がこっちに倒れてきた
「んぶっ、?!
し、白石…驚いたぞ」
「うぅ〜ん…」
「白石、おい、起きろ」
白石の体を揺さぶったが、起きる気配がない
「やだぁ〜、起きたくない…眠い…」
「だから昨日言っただろう、起きれるか?って」
「しらないもん…」
「嘘をつくな白石。今日は仕事だろう」
「起こしてぇ〜」
「…はぁ」
俺は白石の腕を引っ張り、体を起こした
「ちょっと〜!雑じゃない?!もっとこう…なんかさ〜!」
「す、すまない…?」
にっと笑って、白石は俺の頬をぱしんっ!と手で挟んだ
「むぐっ!?」
「…へへっ」
白石は俺を抱きしめて言った
「謝んないの、冬弥は悪くないんだから」
多分、愛に飢えていた
母さんは近くにいてくれたけど
遥はアイドルになってからなかなか遊べなくなっちゃったし
父さんは大河さんと世界に行っちゃったし
凪さんは死んじゃったし
こはねは結婚しちゃうし
きっと誰でもよかった
たまたま、こはねが好きになった
こはねは、こはねといるときは、私があの子の1番だって思えたし、私だってこはねが1番だと思ってたから
でも良く考えれば、私は色んな人に依存してた
仲良くなった子が、私以外と仲良くしてたら悲しくなった
私だけ見てて欲しかった
…だから、こはねが好きだった
こはねには、申し訳ないけど
ただの都合のいい存在でしかなかったんだって、気づいた
でもこはねならきっと、怒って、正してくれるでしょ?
きっとただ、嬉しかった
友達も笑った
父さんも、否定した
家族みんな否定したストリートでの活動を、1番応援してくれたのは彰人だった
司先輩と、咲希さんみたいな暖かさと
彰人にしかない、熱さがあった
彰人とある時は、悲しみも、苦しみも、包み込んで受け入れてくれた
でも、間違ったことは否定してくれた
彰人が幸せなら、それが1番
とでも、言えればよかった
うまく行かなければいいなんて、きっと最低だろう
彰人の心に漬け込んで、自分に依存してほしいなんて
きっと彰人だったら、こんな感情を否定してくれる
でも白石/冬弥は、否定しないで受け入れてくれる
だから俺/私たちは一緒に居ては/いちゃいけないんだ
「冬弥はさ、なんでセフレになってくれたの?」
出勤前、白石は俺に聞いた
「…?それは、彰人を忘れるために」
「そーじゃなくて」
こちらに背を向けたまま、白石は続ける
「もっとなんかあるでしょ?」
「…白石に、仲間に、頼まれたから」
ふっと笑う声だけ聞こえた
「じゃあ、今と同じような状況になってさ、
人殺したいとでも言ったら、一緒に来てくれんの?」
涙目の白石はそう言って振り返った
「…あぁ」
「っはは、だめじゃん。そんなの」
「…そうだな。でも、
俺は仲間に頼まれたからという理由でセフレになるくらい、彰人が全てだった」
喉から込み上げる何かを押し殺して、俺は続けた
「彰人と俺が結ばれていたら、ちゃんと悪いことはダメだって言った」
「…そうだね。私だって、こはねが結婚してなかったらセフレなろうなんて言わないよ」
悪いことは否定する。こんな当たり前のことも、今の俺たちにはできない
「俺は白石の全てを肯定する」
「…私も、否定なんて絶対しないよ」
依存はよくないとわかってても、きっとこのまま、白石と堕ちていく
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